5.0
星5超の、後世に伝えたい名作
いくら個人的に「よい人」であっても、腐敗した組織に属していれば、「個人」としては尊重されず、連座制で罪に問われる…どうにも理不尽な、けれども、どうしようもなかったところから始まる懺悔と再生の物語、先に言います!まぎれもなく星5超の、後世に語り伝えたい名作です!
ヒロインが「転生」した物語は多々ありますが、自分の不慮の死がきっかけだったり、無理やり召喚されたりで、そのほとんどが単なる「設定」。転生後から、ヒロインの全く新しい物語が始まるのが常。それなら、無理矢理転生させなくてもよくない?って感じ…。
でも、この作品は違います。哀しいまでに想いを遺して引き裂かれた「二人」に、何かが与えてくれた赦しの時間の物語…自分なら、こう名付けます。シャーリーの場合、「転生」といってよいのか分かりませんが、彼女が「前世の記憶」をもって生まれたからこそ可能になった、再生の道筋です。
「二人」というのは、もちろん「お嬢様」とカイドですが、他にも「お嬢様」とメイドだったカロン、「お嬢様」と宝石職人見習いだったフェンネルなど、いろいろな人々と「再会」することで、自分の前世と今世を見つめ直し、成長していく…同時に、関係した人々の後悔も、「約束」を守ることで癒していく…それは、まさに「奇跡」の物語。初めて、意味のある転生物語に出会えた気分です。
こんなに重厚な内容なのに、余分な説明は、一切ありません。シャーリーの前世である「お嬢様」の名前さえも、「かつてライウスに嫁いだ王家の娘と 同じ名を持っていたライウスの宝花様」とあるだけ…。彼女を転生させたもの、転生した理由、転生した意味などは、全て読者の想像と解釈に任されています。
「お嬢様」の記憶をもって生まれてきた故に、自分を押し殺して生きてきたシャーリーと、愛する人を死に追いやった後悔を抱えて生きてきたカイド…再び出会うまでの15年、二人はどんな想いで過ごしてきたのでしょう。だからこそ、「二度目の奇跡」を宝物のように大切にし、お互いを想い合う二人の姿が、本当に尊く見えます。
語っても語っても語り尽くせない、この奇跡の物語、電子でも紙でもよいので、ハンカチまたはテイッシュ箱を用意して、ぜひぜひご完読ください。
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狼領主のお嬢様