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人間の愚かさを愛する人
誰とでも仲良くなり、誰とでも話ができる。まさに老若男女問わず。そんな彼女は元風俗嬢。そういうと、人はうっかり素顔を見せてしまうのだとか。わたしならどうするだろう。疑うか、気づかぬうちに蔑んでしまうだろう。
ちひろさんは、冗談はいうけど、要所は大切なことしか言わないし、いわゆる世間の基準で人を評価しない。一期一会、その人を大事にする。ゆえに彼らはちひろさんに救われる。彼女の深い悲しみから生まれた慈悲のような観察眼に。行為に。毎回読むたびに、感じ入ってしまう。こんな情けをもって、人に接せられたらどんなに良かろうか。悲しいかな、自分ばかり良ければよいこの世の中、行きずりの相手まで思いやる余裕などなく。ちひろさんを読むと、そんな自分を戒め、もう一度やり直したい気持ちになる。
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