ブルーロック:キラキラとギラギラ 異色のサッカーバトルマンガ誕生秘話 原作者・金城宗幸×ノ村優介インタビュー

配信日:2026/08/08 7:01

映画「ブルーロック」のビジュアル(C)金城宗幸・ノ村優介/講談社 (C)CK WORKS
映画「ブルーロック」のビジュアル(C)金城宗幸・ノ村優介/講談社 (C)CK WORKS

 「週刊少年マガジン」(講談社)で連載中の人気サッカーマンガ「ブルーロック」の実写映画が8月7日に公開された。「ブルーロック」は、日本をサッカー・ワールドカップ優勝に導くストライカーを育成するため、日本フットボール連合が「青い監獄(ブルーロック)」プロジェクトを立ち上げ、全国から集められた300人の高校生フォワードたちが熾(し)烈なサバイバルを繰り広げる異色のバトルアクションサッカーマンガ。2018年の連載開始以来、ストライカー300人の生き残りをかけたバトルロイヤルを描くという斬新な設定、エゴを剥き出しにして戦う個性的なキャラクター、迫力のサッカーシーンなどが話題になり、コミックスの累計発行部数は6000万部を突破するなど人気を集めている。原作を手がける金城宗幸さん、マンガを手がけるノ村優介さんの原作者の2人に「ブルーロック」の誕生秘話、実写映画への思いを聞いた。

 ◇「聖闘士星矢」のキラキラと「カイジ」のギラギラ

 --金城さんは、これまでも「神さまの言うとおり」などサバイバルゲームを描いた作品を手がけています。サッカーで生き残りを懸けた戦いを描く「ブルーロック」の着想を得たきっかけは?

 金城さん まず「ヒットを目指すぞ」という気持ちで、「聖闘士星矢」のようなマンガを描きたいと思っていたんです。キャラがいっぱい出てきて、象徴する色がいっぱいあって、僕らが子供の頃に見ていた「聖闘士星矢」の印象を作り出せたらいいなと。僕は元々サッカーが好きなので題材に選びました。ストライカーを目指している300人が監獄にぶち込まれて共同生活をして蹴落とし合うというアイデアを思いついた時は、読者に喜んでもらえそうだと思った。楽しそうだし、見ていたいし、これまで見たことがないと感じたんです。

 --確かに、数あるサッカーマンガの中でも「ブルーロック」は異彩を放っています。

 金城さん 素晴らしいサッカーマンガがたくさんある中で、僕が作るとなった時に、ガチンコでサッカーの技術や戦術の話をメインにやるというよりは、バトルアクションマンガを作りたいと思いました。バトルやアクションを多く発生させられるよう主題を相性の良いストライカーにしようと。最初にそれを考えて。あとは「カイジ」にもインスピレーションを受けました。みんなの前にボーンとトネガワが出てきてショッキングなことを言い放って、どんどんギャンブルが行われていって、鉄骨わたりなんかをして、最後にチケットを持っている一人だけが勝てるというあのイメージ。「ブルーロック」では絵心甚八がみんなの前に出てきてセレクションが始まりますが、あれは僕の中では「カイジ」なんです。「聖闘士星矢」などのキラキラ感と「カイジ」などのギラギラ感を混ぜつつ、今まで僕がやってきたデスゲームの要素もミックスしようと思いました。「ブルーロック」では、キャラが死ぬわけではありませんが、脱落していくという形を採ることで、命懸けと同様のドラマが描けるんじゃないかと。

 --ノ村さんとタッグを組むことになった経緯は?

 金城さん ネームができた段階で作画をお願いするマンガ家さんを募るコンペをすることになって、ノ村さんにも参加していただきました。素晴らしいマンガ家さんがたくさんいらっしゃる中でも、ノ村さんは、バトル、アクションが得意で、ダークなかっこよさの表現も上手い。そうした部分が「ブルーロック」で表現したいことにピッタリで、ぜひお願いしたいと感じたこと。また、その時点ではノ村さんがまだ売れきっていなかったというのも個人的に大きかったです。こんなに才能があるのにまだ世の中に見つかっていなかった。すぐ花開く方だろうと思っていましたけど、そのタイミングをご一緒できて本当に幸運でした。キャラデザのセンスも素晴らしく、元々好きだったんです。

 ノ村さん ありがとうございます!

 --キャラクターデザインは重要な要素だった?

 金城さん そうですね。男の子が無条件で目が行ってしまうような絵が描けるというのは、少年マンガとしてはとんでもない才能だと思うんです。ノ村さんにはそれがある。さらに、地面に足がついた絵が描けるというか。バトルでも、上半身だけで必殺技を撃っているだけの絵じゃなくて、地面に足がついたアクションをしていると伝わる絵。動き・運動が描ける方なので、それも素晴らしいと思っています。

 --ノ村さんは、「ブルーロック」のアイデアを聞いた時、どう感じましたか?

 ノ村さん 僕は元々はサッカーに詳しいわけではなかったので、サッカーマンガのネームということで見せていただいた時には、「サッカーは自分はやらないだろうな」と思ったのですが、読むとものすごく面白くて、「描きたい」「これを他の人に渡したくない」と思っちゃったんです(笑)。サッカーの知識はないけど大丈夫ですか?と金城さん、編集さんにお伺いした時に、単なるサッカーものではなく、バトルもの、アクションものとして、キャラのキラキラギラギラを描いていきたいからノ村さんに頼みたいんですとおっしゃっていただいたので、「それならやります」と。サッカーの知識は教えていただいたり勉強しつつ、自分の持っている武器が役立つのであればやりたいとお返事させていただきました。

 ◇“色”の重要性 子供たちにも読んでもらうために

 --個性的なキャラクターも魅力です。中でも中心に立つ主人公の潔世一はどのように生まれたのでしょうか。

 金城さん ストライカーになりたいけどパスを出すという選択肢をしないといけないという役割を負わされて、同調圧力とか絆とか、そういうものに「どうなんだろうか?」と思う部分の僕の感情を乗せています。作中でも出てくる「エゴイストであれ」という話が一番刺さる日本人像が潔というか。「こんなもんなんかな世界は」と、現実も分かってきてちょっとだけ諦めが始まる時期の高校生だけど、「エゴを重視する別の世界」に引っ張り込まれたら、モヤモヤする何かを溜め込んでいた分爆発するんじゃないかと思って、潔世一というキャラクターができました。

 ノ村さん 潔のビジュアルに関しては、本当にオーソドックスな、その辺にいそうな高校生的。いわゆる「普通」に見えるようにしました。ただ主人公なので、主人公らしい目力の強さは意識しました。あとは髪の毛を双葉のように立たせて、普通だけど目立つ特徴があるバランスを目指して作りました。

 --他のキャラクターはどのように形作っていったのですか?

 金城さん 潔と絵心ができて、その後、潔と並ぶ蜂楽廻、千切豹馬、國神錬介という順番で作っていきました。ノ村さんに「最初にこういうキャラが4人メインで出てきます」とお伝えして。キャラクターが並んだ時のバランスをイメージして、たとえば「幽☆遊☆白書」や「HUNTER×HUNTER」を例にして、冨樫義博さんの作品のメイン4人のイメージで伝えてみたり。ノ村さんがいろいろ苦心してくださって、「このキャラの色は何色にしますか?」など相談して作っていったと思います。

 ノ村さん 蜂楽は素案をいただいた時は確か普通の黒髪でした。「蜂」と名前にも入っているし、トリッキーでつかみどころのないキャラクターだったので、危険色にしたいなと。蜂だし、黒髪に黄色のインナーカラーを入れようと。國神はオレンジにしたりサイズ感を意識して。4人が並んだ時にバランスが取れるような、色味、キャラクターのシルエットを作っていきました。

 --キャラクターの髪の色は、重要なポイントになっている?

 ノ村さん めちゃくちゃ重要です。グッズもそうですが、「ブルーロック」はキャラクターを色で認識していただいている。そこは最初から狙ったところではあるんです。

 金城さん 「聖闘士星矢」ですからね!

 ノ村さん 「聖闘士星矢」「ゴレンジャー」「プリキュア」も、みんなやっぱり色で認識しているし、実生活の中でもチェーン店やコンビニを色で覚えているじゃないですか。お子さんの読者にもたくさん読んでほしかったので、色で分けることによって、最初は名前は覚えられなくても、小さな子供にも「この色のキャラ」と認識してもらえるかなと。

 --それでは、実写映画でもキャラクターの髪の色に関してオーダーしたこともあったのですか。

 金城さん そうですね、制作の皆さんもこだわってくださって、監修させていただきました。色を派手にするとコスプレ感が出てしまうし、抑えすぎると認識できない。特に、御影玲王の紫、千切のピンクをどのラインにするかは、密にやり取りさせていただきました。

 ノ村さん 髪色は写真でチェックさせてもらったのですが、ライティングも含めてスクリーンに映った時はどう見えるかまで細かく確認させてもらいました。

 金城さん ありがたかったですよね。

 ノ村さん もう本当に。

 --キャラクターが覚醒した時などに目から放たれるオーラも、キャラクターによって色が違います。

 金城さん 目のオーラは、ノ村さんが別の作品で薄墨でオーラを描いていたのが好きだったので、「これを使いましょう」と。

 ノ村さん スイッチが入るというか、テンションを上げられるギミックみたいなものですよね。

 金城さん 分かりやすいですしね。あと、サッカーマンガなので、必殺技や武器がなくて、見た目が大きく変わることはないから、目で表現したほうがいいかなと。男の子が「ああなりたい」と思うワクワク感が出ればいいなと。

 ノ村さん そうですね。男の子はやっぱり目からオーラ出したいですもんね(笑)。子供たちが「自分は何色のオーラだから」「自分はこのヒーローだから」と、オーラをまとってシュートを打つ真似をしてくれたらなと思って描いています。

 ◇新たな価値観を注入する言葉の力 表情の温度管理

 --絵心甚八をはじめとしたキャラクターの言葉にも心に刺さるような鋭さがあります。セリフ作りで意識していることは?

 金城さん 「カイジ」を参考にしていると思います。「カイジ」の敵役ってある種の「本当のこと」を言うんですよ。耳が痛いことを言うし、世の中で「それ言っちゃダメなんじゃない?」とされている生々しい真実みのあることを言葉にして、「本当はそうなのかもしれない」と思わせる。テンポ感やリズム感にはある種、漫談師の要素もあると感じます。そのテイストが僕の中にあるので、絵心がしゃべる時はそういうイメージで書いています。刺さるというか、何か新しい価値観がもらえるというか。正しいか間違っているかはさておき、「それって本当のことかもしれない」という感覚が読者や潔に伝わるかを大事にしています。

 --そうした強い言葉を発するキャラクターのたちの表情を表現する中で大切にしていることは?

 ノ村さん 僕は金城さんからネームをいただいて、打ち合わせの時に「なんでこういう表情をしているのか」「なんでこういうことを言うんですか」という確認作業をさせてもらっているんですけど、その上でどれくらいの温度感で描くか考えます。読んでいる人に正しくそのキャラクターの感情に乗ってもらいたいので、もちろん強い言葉を言う時は、より強さが伝わるように。最初は「何言ってんだこいつ」と思うようなキャラでも、聞いているとある種の真実を言っている。それに対してみんながどう揺さぶられるのかという部分をこぼさないように描くように意識しています。表情の温度感管理みたいことはめちゃくちゃ細かくやっているつもりです。

 ◇実写映画に感じた本気

 --実写映画では、高橋文哉さんが主人公の潔世一を演じるほか、蜂楽廻役の櫻井海音さん、千切豹馬役の高橋恭平さん、國神錬介役の野村康太さんら旬の若手俳優が集結しています。公開に向けた思いは?

 金城さん 最初に映画化のお話をいただいた時から、どんなふうになるんだろうと僕自身も楽しみにしていたので、読者やファンの皆さんと一緒の感情で見るつもりです。元々たくさんの大人たちがめっちゃ本気で「作りたい」と言ってくれたから、僕らもぜひお願いしますと思えたので。そこから、撮影現場も見学して、高橋さんはじめキャストの皆さんも本気で取り組んでくれていると感じました。キャストさんたちも、この映画で人生を変えようとしている気迫を感じたというか。ここからさらに飛躍していって、すごい俳優さんになられる方ばかりだと思うのですが、この映画をそうした一つのターニングポイントにしようと思っていらっしゃるんだろうなと思えたんです。そういう作品に選んでいただけているならめちゃくちゃありがたいし、熱いし、皆さんのそういう思いをスクリーンでどんなふうに見られるんだろうと。「ブルーロック」という箱の中で何が起こるのか、映画館で見られたらいいなと思っています。

 ノ村さん 僕も、マンガ的な表現の多い作品なので、実写映画としてどうなるかは当初全然想像がつかなかったんですけど、これまでに見せていただいた映像がめちゃくちゃ格好よくて、自分が思っていた以上の「これはいけるぞ」という感じがあります。高橋さんたちキャストの皆さんが本当に原作を好きでいてくださっているのも感じ取れました。難しいことだと思うのですが、映画表現を大切にしつつ、できるだけ原作に忠実に作ろうとしてくださっている。スクリーンの中に「ブルーロック」がちゃんとできているので、安心して劇場に行っていただきたいです。こういう潔や蜂楽、千切、國神もありだなって思ってもらいたいんですよね。原作が好きな方も、アニメから入った方も、映画から入る方も、キャストのファンの方もいらっしゃると思うんですけど、どこからの入り口でもいいので、自分の知らない媒体の「ブルーロック」を楽しむ経験にしていただければうれしいなと思っています。

(しろいぬ/MANTANWEB)

提供元:MANTANWEB

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