さよならララ:グラフィックデザイン 濱祐斗インタビュー “波打ち際の物語”と捉える デザインに込めた思い
配信日:2026/08/01 10:01
キネマシトラスの15周年記念作品となるオリジナルアニメ「さよならララ」。童話「人魚姫」を題材としたアニメで、人魚姫ララが200年の時を経て、現代の琵琶湖によみがえる。グラフィックデザインを担当する濱祐斗さんにデザインに込めた思いを聞いた。
◇私たちがこの世界を愛した最初の理由が描かれている
--今作で担当したことは?
タイトルロゴを出発点として、ポスターやキャラクタービジュアル、BD(ブルーレイディスク)パッケージといった映像の外側のデザインから、アニメーション内のテロップやクレジットといったタイポグラフィ、茉里がララに渡したココア缶のアニメーション用のリファイン作業、大津家の食卓のふりかけや祥弥が何気なく読んでるマンガ本の表紙のような何気ない日用品といった映像の内側のデザインまで、作品に関わるグラフィックデザインを一貫するかたちで、連名でクレジットされている山口真生さんと一緒に制作しています。
--作品の魅力をどのように感じている?
「人魚姫」は古典ではありますが、今の時代にやる意義のある現代的なテーマであると思います。物語の道筋としては、人魚姫のララが茉里や滋賀に住む人々との生活を通じて、自身の背負う運命と向き合う。端的にいえば、御伽話(フィクション)が時空をこえて現代(現実)と出会う話だと思うのですが、同時に、体感としては私たち(現実)がアニメーション(フィクション)に出会いなおしているような感覚があります。そこに素直で根源的な喜びがあるというか、ララのコロコロかわっていく表情にも、茉里の発する真っすぐなセリフにも、私たちがこの世界を愛した最初の理由が描かれているように思うんです。
--デザインを手掛けるうえで最も大切にしたことは?
海と陸、人魚と人、ララと茉里、フィクションと現実……自分は「さよならララ」を広く波打ち際の物語と捉えているのですが、一般的なグラフィックデザインの機能として、境界線を明確にすることで物事の理解を促す側面があります。つまりこの大地に線を引くことで地図を作り世界を分かりやすくする行為なのですが、現実においては、寄せては返す波打ち際のように、ここからが海でここからが陸と確かな線を引くことはできません。
ですので今作においては、デザイン自体が明瞭に語り示すことで作品の輪郭を際立たせるのではなく、デザインと作品が紐づいた全体として、その存在自体を感じてもらえるようなアプローチを常に考えていました。文字通り作品の名前であるロゴデザインにおいて、そういったイメージをうまくかたちにできたので、とても気に入っています。光をまぶしいと感じることはできても、掴み取ることはできないんです。
◇つくる行為の根源的なところに向き合おうとするエネルギー
--「人魚姫」がモチーフのアニメはあるかもしれませんが、現代の「滋賀」「琵琶湖」というのが斬新です。デザインで表現しようとしたことは?
抽象的な受け答えになってしまうのですが、アニメーション自体が素直にそこに視点を置くならば、そこに映るものがそのものとして素直に受け止められるような見え方を用意したいと。監督の小出(卓史)さんが「東京が舞台のアニメの場合は理由を求められないのに、滋賀が舞台のアニメというと理由を求められる」というようなお話をされていて興味深かったのを覚えています。もちろん企画のフレームとしてはさまざまな立場の人を説得させるための説明は必要なのだと思いつつ、「説明できる理由」と「ただ存在としてある」ことは違うわけです。
「さよならララ」における「滋賀」や「琵琶湖」という要素は、物語を機能させるための装置ではなく、ただそこにあるものとして描かれている点が魅力的だと思っていて(なぜなら、実際に滋賀や琵琶湖はただそこに存在しているわけなので)。個人的にアントニオ・ロペス・ガルシアというスペインの作家が好きなのですが、彼の絵画は目で見た風景がそのまま写しとられていて、それは写真のように写実的に風景を描くこととは微かに差異がある。「そこにあるものがただそこにある」ような状態をつくりたいと思ったら、「ただ存在としてある」ということのために、既存の見え方(世界とはこういうものであるという紐付け)を一度解きほぐして結び直す必要があります。
--少し懐かしく感じる映像も魅力です。デザインでもそこを意識した?
「懐かしい」という言葉をどう捉えるか、難しいところはあります。オリジナル作品として「この作品らしいもの」、つまり世界にまだないものを作りたいという気持ちが間違いなくあるので。その上で一緒に作っていて感じた制作チームの姿勢としては、つくる行為の根源的なところにちゃんと向き合おうとするエネルギーが強くあったと思います。
そういった意味で、例えばセル撮影のような古典的な技法への試みというのは、手法としては知っているけれど、デジタルでの制作環境が主流となった今において、個々人の「つくる」という実体感としては遠いものになっていて、そういったものに内在する魅力を身体感覚として会得したい気持ちがあったのではと。
グラフィックデザインにおいても、近代のデザインという概念が成立する前の時代に絵画や彫刻などの制作の中で試みられていたデザイン的行為(デザインになる前のデザイン)に刺激をもらいながら、懐古主義とは違うかたちで過去の人たちの知恵を借りて、今を推し進めたい気持ちでした。
ー-最後にメッセージをお願いします。
たくさんの人が丁寧に一生懸命作っているわけなので、じっくり見てほしい!わけですが、同時に、自分としてはなんとなく、ぼんやり眺めるように見てほしいなという気持ちがあります。「さよならララ」を作っていて、改めてニメーションとは連続する光の表現なんだなと気づきました。光をぼんやり眺める。そんな不思議な時間が見る人の生活の中にあるならば、とてもうれしく思います。
「さよならララ」は、毎週日曜深夜0時半にTOKYO MXほかで放送中。(阿仁間満/MANTANWEB)
提供元:MANTANWEB











