映画クレヨンしんちゃん:最新作は“妖怪×しんちゃん” 「大切なものは目に見えない」 独自の妖怪の国を表現 渡辺正樹監督インタビュー

配信日:2026/07/26 7:01

「映画クレヨンしんちゃん 奇々怪々!オラの妖怪バケ~ション」の一場面(C)臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2026
「映画クレヨンしんちゃん 奇々怪々!オラの妖怪バケ~ション」の一場面(C)臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2026

 人気アニメ「クレヨンしんちゃん」の劇場版33作目となる最新作「映画クレヨンしんちゃん 奇々怪々!オラの妖怪バケ~ション」が7月31日に公開される。舞台は“妖怪の国”で、秋田県の夏の風物詩・大曲の花火大会を見るためにひろしの故郷である秋田へ行くはずだった野原家が、妖怪の国へ迷い込み、大冒険を繰り広げる。監督を務めるのは、テレビアニメシリーズの演出を2022年から担当し、「映画クレヨンしんちゃん」シリーズでは2024年から絵コンテ、パート演出を担当している渡辺正樹さん。初めて映画シリーズの監督を務める渡辺監督に制作の裏側、作品に懸ける思いを聞いた。

 ◇知らないから怖い、知れば怖くない ひと夏の冒険を大切な記憶に

 最新作は、日本の原風景が残る妖怪の国が舞台。妖怪の国に迷い込んだ最中、人間だとバレてしまったひろしとみさえは“おしりだま”を取られ、妖怪の姿に変化してしまう。おしりだまを取られると人間の頃の記憶を忘れてしまう。しんのすけたちは“おしりだま”を取り戻し、人間界へ帰るために奮闘する。

 “妖怪×しんちゃん”は映画シリーズではありそうでなかった組み合わせだが、渡辺監督が「妖怪をやりたい」と提案したのがきっかけだった。

 「妖怪を選んだ理由は、忍者や恐竜、魔法など子供が好きそうな要素がいくつもある中で、妖怪がその一つだったからです。しんちゃんの映画ではこれまでやってこなかった組み合わせでもあったので、ぜひやってみたいなと」

 妖怪の国に迷い込んだ野原家は、九尾の狐の妖怪・やこ、タヌキの妖怪・まめ太、唐傘の妖怪・唐蔵、力持ちで心優しいアマビエの妖怪・ピン子といった妖怪たちと出会い、最初は怖さがありながらも、互いを知り、打ち解けていく。ストーリーは、脚本を手がける中村能子さんのリードのもとに形作られていき、その中で描きたいテーマが見えてきたという。

 「脚本の中村さんと相談していく中で、互いを知り合うことによって恐怖感が薄れていき仲良くなれるよね、という話になりました。もう一つ、僕自身が作りながら表現してみたいと考えたのが『大切なものは目に見えない』ということ。妖怪は目に見えない存在なので、妖怪たちとしんのすけたちのひと夏の出会い、冒険、別れというものが、すごく大切な記憶になっていく。そういう映画を作りたいと思って企画を進めていきました」

 「大切なものは目に見えない」。テレビやインターネット等、情報にあふれている現代の状況とも通ずるものがあるような気がする。渡辺監督は「世の中に対して強いメッセージがあるわけではないです。押し付けになってしまうかもしれないので」とした上で、「最近はタブレットも発達していて、やはり目から来る情報が強くなっているのですが、都会から離れて田舎に行って真夜中に田んぼの真ん中に立ってみると、月明かりやそばを通る電車がすごく明るい。目を塞ぐことによって、普段はないような感覚を得ることができるんじゃないかなと。それは作りながら考えていたことです」と振り返る。

 ◇“国民的友達”しんのすけを中心に描く 独自の世界観を作る

 「互いを知り合うことによって恐怖感が無くなり仲良くなれる」「大切なものは目に見えない」といったテーマがある中で、渡辺監督が制作で軸としたのは、「しんのすけを中心に描くこと」だった。

 「そこは絶対にブレないようにしていました。いろいろな問題が起きたり敵が現れたり、トラブルが起こりますが、必ずしんのすけ目線で、しんのすけを中心にカメラを回していくことを意識しました。『映画クレヨンしんちゃん』はシリーズの監督たちがそれぞれ、大事なものを持っているので、バリエーションが広い。なので、僕はそこをすごく気にして作りました。『クレヨンしんちゃん』はテレビアニメがあるので、子供たちはしんのすけを国民的な友達みたいな感覚で受け止めてくれていると思います。その身近な友達が活躍する映画にしたほうが楽しんでもらえるんじゃないかと考えました」

 そんなしんのすけたちが訪れる秋田、大曲の風景、妖怪の国の描き方にもこだわった。

 「美術さんが作品に合うタッチを選んでくださり、大曲の田んぼや山の感じなどの雰囲気を出していただいています。実写と水彩画の間くらいのタッチで、油彩のように重い感じではない、柔らかさがあるというか。妖怪の国も、大曲の風景と親和性は持たせつつ、昭和の時代をベースにしてレトロなものを置いていただきました。ただ、レトロなものだけでは昭和にタイムスリップした感じが出てしまうので、昭和に似ている要素はたくさんあるけれど、ところどころに明治、大正の和洋折衷の建物を混ぜてもらい、独自の世界を作りました」

 昭和のようで昭和ではないという違和感を持たせながら、今作ならではの新しい妖怪の国を作ろうとした。

 音楽に関しても、日本の妖怪ということで和の雰囲気に重きを置きつつも、「ところどころピアノを入れてもらいました。『ストリングスを入れて頂くのも良いと思います』という発注をさせてもらい、和の空気感は欲しいのですが、楽器や音の質感は和に固執せず新しいものも取り入れ、“ザ・和”の雰囲気ではなく、新しい音楽の方向で世界観を表現してみたい、とお願いしました」という。

 ◇挑戦し続ける「映画クレヨンしんちゃん」

 1993年に第1作が公開された歴史ある「映画クレヨンしんちゃん」シリーズにおいてこれまでやっていない取り組みがあるという。今作では映画本編にて初めて3Dレイアウトを採用した。

 「ひゃくえもんという妖怪の実験室は3Dレイアウトを使っています。3Dレイアウトを組んでいるので、そのまま3D背景をフィニッシュまで持っていけました。実験室のメーターやビーカーの泡なども動きっぱなしにできます。3D空間で組んでしまうからこそできることなので、こだわってやらせていただきました」

 今回初めて映画シリーズを手がけた渡辺監督自身にも挑戦したことがあった。

 「先程もお話ししたように、僕の中で『大切なものは目に見えない』ということをテーマとして持っていて、見終わった後にお客さんが普段気がつかなかった部分に『おや?』と思ったり、そういうきっかけになる映画になってほしいと思います。夜道を歩いている時に、電柱の影を見て『なにかいるかも』『もしかしたらそこに妖怪がいるんじゃないかな』と、想像することを楽しんでもらえたらうれしいです」

 実は映像の中にも、一度見ただけでは気付かないような“仕掛け”があるという。「見えないのがきっといいのでしょうけど、見えないと伝わらないので」と難しいテーマに挑んだ。

 「子供に見てほしいと思って作っていますが、大人が見て面白くないものは、子供が見ても面白くないんじゃないかなと。だから、子供だましには絶対にしたくない。ガチでやっています」

 誰も見たことはないが懐かしさを感じる不思議な妖怪の国で繰り広げられるしんのすけたちの大冒険。目には見えないけれど大切なものをスクリーンで感じてほしい。(しろいぬ/MANTANWEB)

提供元:MANTANWEB

この記事をSNSで共有する

新着ニュース記事

人気のニュース記事

新着の診断コンテンツ

ショート漫画の新着記事

インタビュー・取材の新着記事

コラムの新着記事

めちゃマガで人気の記事

copyright(C)2016-2026 アムタス > 利用規約

サイト内の文章、画像などの著作物は株式会社アムタスあるいは原著作権者に属します。文章・画像などの複製、無断転載を禁止します。

  1. めちゃコミック
  2. おすすめ無料漫画コーナー
  3. めちゃマガ
  4. ニュース
  5. 映画クレヨンしんちゃん:最新作は“妖怪×しんちゃん” 「大切なものは目に見えない」 独自の妖怪の国を表現 渡辺正樹監督インタビュー

めちゃマガとは?

電子コミックサイト「めちゃコミック」がお届けする、無料で読めるアナタの漫画情報マガジンです。

漫画がもっと面白くなった!

みんなにオススメしたい作品が見つかった!

漫画の新しい読み方に気づいた!

人生の1冊にめぐり合えた!

こんな運命の出会いをアシストできるように、独自の視点でたくさんの作品を紹介していきます。

【公式SNSでも情報を配信中!】

めちゃコミックとは?

CM・広告や口コミで評判の国内最大級・電子書籍サイトです。

テレビや映画で話題の最新人気漫画から定番作品、無料立ち読みまでラインナップも充実!

いつでもどこでも気軽に漫画を楽しめる毎日を提供します。

※めちゃコミックは、docomo / au / SoftBankの公式サイトです。

めちゃコミックについて詳しく見る