さよならララ:シリーズ構成・川原杏奈インタビュー テーマは「ララの上京物語」 人魚姫はなぜ琵琶湖によみがえった?
配信日:2026/07/18 10:01
キネマシトラスの15周年記念作品となるオリジナルアニメ「さよならララ」。童話「人魚姫」を題材としたアニメで、人魚姫ララが200年の時を経て、現代の琵琶湖によみがえる。シリーズ構成の川原杏奈さんに制作の裏側を聞いた。
◇琵琶湖にやってくる大きな事情
--担当したことは?
全体のストーリーを考えるシリーズ構成という仕事と、各話の脚本を担当しました。脚本は他の脚本家も入れて3人で分担して書いています。
--参加することになった経緯は?
小出(卓史)さんを監督とするキネマシトラスのチームが若手の脚本家を探しているということで、私の大学時代からの友人である中西基樹監督がチームプロデューサーの石川(祥気)さんを紹介してくれました。キネマシトラスに伺い、その時点の企画書を読ませていただき、この作品を自分ならどうしたいか話したところ、一緒に作品を作ろうという流れになりました。
--現代の滋賀、琵琶湖が舞台というのが斬新です。アイデアが生まれたきっかけは?
私が参加した時点で「人魚」「滋賀」「琵琶湖」というモチーフは決まっていました。元々、小出さんの中に大きくあったモチーフだったと思います。そこからお客さんに手に取りやすいストーリーにするにはどうしたらいいか皆で話し合っているうちに、ただの人魚でなく童話「人魚姫」をモチーフにしようと決まりました。
--「人魚姫」だから表現できたことは?
童話の「人魚姫」では、人魚姫ははかなくも泡になって消えてしまいます。幼い頃から、その物語の結末を読むたびに悲しくやるせない気持ちになっていました。もし彼女が一人じゃなかったら、一緒に歩む仲間がいたら違ったんじゃないか、そう思い茉里というキャラクターを作りました。
そして舞台は現代の滋賀県、琵琶湖。童話の「人魚姫」がアンデルセンの生まれたデンマークをイメージして作られたとすれば、ララたち人魚はデンマーク付近の海で生まれていたはずです。そんな人魚たちが日本の滋賀県琵琶湖にやってくるには、何か大きな事情があったのではと考えるようになりました。
ヨーロッパにおける人魚の目撃情報は大航海時代を含む16~18世紀頃が最も多く、19世紀頃には激減します。もしララのあの恋がきっかけで人魚たち一族に危険が迫ったとしたら、人魚たちはヨーロッパにいられなくなり、世界の各地を旅して日本にたどり着き、琵琶湖で眠る。そんなことが起こっていてもおかしくないなと考えました。
自分が人間に興味を持ったことがきっかけとなり、家族を大変な目に遭わせてしまう。そんな大きな業を背負った人魚が、現代日本に生きる茉里と出会うことでどのように物語を変えていけるのか。そんなストーリーだったら見てみたいな、と考えるようになりました。
◇生まれたときに既に抱えてしまっている敵対関係とどう向き合うか
--一番大きなテーマは?
大きなテーマとして小出監督と話したのは、「この作品はララの上京物語」ということでした。上京には好奇心と挑戦とが伴います。小出さん自身も滋賀県から上京されていますし、私自身もクリエーターとして生活するために好奇心と挑戦が不可欠でした。そのため地上に上がり運命に挑戦したララを肯定してあげたいと考えたんです。童話「人魚姫」では結局人魚姫は報われないままに終わってしまいます。だからこそ、新たな終わり方を提示しようと思いました。
また、私個人の裏テーマとしては、「生まれたときに既に抱えてしまっている敵対関係とどう向き合うか」というものがありました。海の世界ではララが生まれるよりもずっと前から人間と人魚との敵対関係がありました。一方で茉里もまた、人間に生まれた時点ですでにリサなど人魚からの恨みを買っています。本人の意図しないところで生まれてしまった争いにどう決着をつけるべきなのか、というのも現代を描く物語として大事なテーマであると考えています。
--「これだけは外せない」と考えていたことは?
童話「人魚姫」をモチーフとして描く以上は、その運命の結果を提示するべきだと思いました。なぜあのとき本当の愛を見つけられなかったのか。そして、今回は本当の愛を見つけられるのか。現代改めて「人魚姫」を描く以上は、現代に生きる私たちだからこその答えを見つけなくてはいけないと思いました。
あとは実在する場所をイメージした、地に足のついたストーリーにすることも意識しました。滋賀県やその近辺に住んでいる人が、ララや茉里の生活が手に取るように想像できるような物語になるといいなと。滋賀県は監督の地元でもあるので、茉里がどうやって家から学校に通っているのか、アルバイトをするならどこが現実的なのか、そういった地理のことも小出さんに話を伺いながら作っていきました。キャラクターの苗字を地名にしたのも、地元の方により親近感を感じて欲しいからです。滋賀県の方には自分の住んでいる町はどのキャラクターの名前になっているのかなども、ぜひ注目してほしいです(さすがに全ての地名を使うことはできなかったですが……)。
◇安易な決めつけを描かない
--逆に「これはやらない」と決めていたことは?
安易な決めつけを描かない、ということでしょうか。「女の子だからこうする」「高校生だからこうする」というような決めつけはキャラクターへの思いやりに欠けるように感じます。例えば茉里の学校に通う高校生を描くとき。現代の高校生は私が高校生だった頃よりもずっと大人で、独自の哲学を持っている子が多いように感じます。だからこそ、典型的な設定や歪み合いを描くと嘘っぽくなってしまう。どのキャラクターも一人の人間として哲学があり、それぞれ思いやりの心をもって生きているんです。
一見悪役のように見えるキャラクターもそうで、ヒールに見えるキャラクターには必ずそうなるゆえんがあると考えています。だからヒール役のキャラクターにも「ただの悪役」というだけの役割を与えず、その哲学が生まれたきっかけを描いてあげたいと思いました。
小出さんや谷さんをはじめ本読みに参加していたメンバーはそういった精神を大事にしている方ばかりで、だからこそ心を一つにして脚本作業を進められたのかな、と思っています。
--この作品ならではの挑戦になったことは?
私にとって初めてのアニメオリジナル作品だったので、全てが挑戦だったように思います。私の作品歴としては実写作品が多いですので、実写ではできないことを挑戦しようと思い、水の中のシーンや時代が変わるシーンも積極的に入れていきました。
そういう点で言うと、グレイスの存在はアニメならではの表現だったように感じます。人魚の魔女でありながら、地上では魚の姿に変わってしまう。そういったメタモルフォーゼに説得力が持たせられるのはアニメならではだと思います。海の中ではあれだけ威厳と妖しさを持っていたグレイスが地上では小さな観賞魚になり、「ゴンちゃん」と呼ばれている……そんなギャップも楽しんでいただければと思います。
--最後にメッセージをお願いします。
アニメ「さよならララ」をご覧いただきありがとうございます。皆さんからいただく温かい感想にいつも元気をもらっています。皆さんがこの作品を受け取ってくれることが、何よりの喜びです。
おこがましい願いかもしれませんが、私は「さよならララ」が皆さんの隣を一緒に歩いていけるような、そんな存在になれたらいいなと願ってこのストーリーを書きました。この作品が少しでも皆さんの人生を明るくできたらうれしいです。ぜひ最後までお楽しみください!
「さよならララ」は、毎週日曜深夜0時半にTOKYO MXほかで放送中。(阿仁間満/MANTANWEB)
提供元:MANTANWEB






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