堀江瞬:「彼女、お借りします」インタビュー 愛されない主人公・和也と向き合う葛藤 転機となった第3期
配信日:2026/04/10 21:01
「週刊少年マガジン」(講談社)で連載中の宮島礼吏さんのラブコメディーマンガが原作のテレビアニメ「彼女、お借りします(かのかり)」の第5期が、4月10日深夜2時23分からMBS・TBS・CBCの深夜アニメ枠「アニメイズム」ほかで放送されている。2020年に第1期が始まってから約6年がたち、個性豊かなヒロインたちが人気になっている一方、木ノ下和也は不遇の主人公なのかもしれない。和也は賛否両論のある主人公だ。ダメダメなところもあるが、一途で人間くさく、優しさもある。徐々にその魅力に気付かされるところもあるが、序盤はダメなところが際立って見えたところもあったかもしれない。和也役の堀江瞬さんに、同作や和也への思いを聞いた。
◇どう愛せばいいんだろう?
「かのかり」は、恋人にフラれてしまったダメダメ大学生の和也が、レンタル彼女の美少女・千鶴と出会う……というストーリー。2017年に「週刊少年マガジン」で連載をスタートした。テレビアニメ第1期が2020年7~9月、第2期が2022年7~9月、第3期が2023年7~9月、第4期が2025年7~9月に放送された。
約6年続く人気作ではあるが「かのかり」で堀江さんのソロインタビューが行われるのは、実は初めてだ。和也、長く愛されている作品の魅力をどのように感じているのだろうか。
「第5期で初めて(笑)。うれしいですね。最初、和也は『自分とは違う』と自己投影をしたくないような人物像でしたが『やっぱり和也は自分なんじゃないか』とリンクする部分も出てきたかもしれません。人間くさくあって、大切な人への気持ちは本当に100%の純度で、全く嘘がない。そこに胸打たれて、自分に似てるかも、こういうふうになりたいかもと少しずつ思ってもらえるかもしれない。和也にそういう一面があって、ヒロインたちの可愛さが引き立てられるところもあると思うので。決してヒロインの可愛さだけで成り立っているわけではない。和也という男が情けない顔しながら支えているところが、この作品の魅力なんじゃないかなと思っています」
堀江さんは和也への思いを「最初は、世間の皆様とほとんど同じような反応というか……(笑)。第1期のときはすがすがしくバカでクズでしたし」と正直に語り始めた。
「ほかのキャラクターでも、自分との共通点を見つけられないことはありましたが、それでも愛せたんです。ただ、和也だけは……(笑)。どう愛せばいいんだろうと思っていました。第1期は愛せないままだったかもしれません。自分とはほど遠い存在を演じるために、好き嫌いをあまり考えずにいました。別作品で天ちゃん(ヒロイン・水原千鶴役の雨宮天さん)と一緒になったときに『和也が本当に分からないんですよ』という話をしたこともありました。天ちゃんは先輩ですし、愛せるポイントが見つからないキャラクターを担当することになったとき、どうしたらいいのかな?と相談するくらい分からなかったところもありました。天ちゃんも『ま、和也はね……』という反応で(笑)」
世間の和也の評価を堀江さん自身も感じながら演じていた。
「世間の反応だけじゃなくて、ほかの現場でも『かのかり』を見てくださってる役者さんからも『和也、ヤバくない?』と言われたり(笑)。1、2期は『いや、それでも頑張るぞ』という気持ちでした。1期の収録は放送前だったけど、放送されると『全然愛されていないぞ』となって……。ここまで言われちゃうんだと目の当たりにして、2期の収録は気持ちが重くなっていました。嫌われにいく感覚でしたね。悪役で嫌われるんじゃなくて、主人公ですからね。だから、和也として目立とうとしないことを考えていました。和也は結構しゃべっているけど、なるべく尺をギュッとして、ヒロインの皆さんにゆとりのある尺を提供するような気持ちでした。引き立て役のような気持ちでした」
複雑な思いを抱えていた一方で、和也を演じる楽しさもあった。
「好きになれない気持ちとの戦い、葛藤もありました。ただ、真逆だからといって、演じにくいわけではなかったんです。分かりやすいところもありますね。例えば、麻美ちゃんのように、言葉の腹に思いがあるという何重にも難しいキャラクターだったらもっと考えるところがあったかもしれないけど、和也は真っすぐなピュアなキャラクターですし、ハッチャけることができて楽しさはありました。ただ、気持ちが理解できない(笑)」
◇第3期で変わった和也
和也は成長するキャラクターでもある。演じ続ける中でターニングポイントがあった。
「演じる上で心がけるべきところは、あんまり変わっていませんが、やっと愛せるかもと思えるようになった明確なターニングポイントがありました。第3期の映画制作編です。僕の中で和也の評価がうなぎ登りに上がったんです。それまでは後先考えずに突っ走るだけだったけど、考えるようになった。人間としての立体感のようなものが生まれたと感じましたし『ちゃんといいところがあった』『愛せるんじゃん』と皆さんも見つけたと感じています」
和也は変化していくところもあるが、堀江さん自身は意識しすぎずに演じようとした。
「堀江瞬として気持ちはあまり反映しないようにしていました。『やっと和也の見せ場きたぞ! ここでみんなの好感度かっさらっていくんだ』とは別に思ったりはしないですし、それは『かのかり』だけじゃなくて、役を演じる上で、気を付けていることで、自分のエゴを乗せないようにしています。デビューして間もない頃は、あざとく引っかかりどころを残してみようとしたこともあったのですが、それによって軸がブレたり、破綻してしまったりすることに気付いて、それからは自分のエゴを入れないようにしています。監督や原作者の先生の思い、共演者との掛け合いで生まれてくるものを大切にしたい。今は、メタ的なエゴは入れない方がいいというフェーズなんです。だから3期の見せ場も意識はしすぎてはいなかったです」
和也は女性に対してとんでもない妄想をしたり、セリフの中には下ネタもあったりする。
「最初の頃は少し恥ずかしくなってしまうこともあって、テストでは100%の力でいけないことがあったり、単純に技術が追いついていなかったりして、何回かテークを重ねることもありましたが、6年もやっていますし、今となっては恥じらいもなくできるようになりました。ただ、真面目な話をしているときに、和也がやらしいことを考えているのはやっぱり理解できないかな(笑)。5期になっても和也はまだそういうところがあるんですよね」
◇“麻美”悠木先輩へのリスペクト
和也にとってのターニングポイントを経て、第4期では、原作でも人気のハワイアンズ編に突入した。第5期はその続きが描かれる。和也と千鶴の“本当”の関係を知る小悪魔的な元カノ・七海麻美が千鶴に急接近し、ヒリヒリするようなシーンが続き、麻美を演じる悠木碧さんの怪演も話題になっている。
「分かってはいたけれど、やはり悠木先輩はなんて恐ろしい先輩なんだと思いました(笑)。それまでも麻美ちゃんの不穏なところやえげつない一面は幾度となく見ていましたが、その一面が和也に対してぶつけられることはあまりなかったんです。5期では、その悪意が直にぶつけられます。千鶴と麻美ちゃんが掛け合っているのを後ろから見ていると、見てはいけないものを見ているような修羅場なんです。席を外した方がいいのかな……というくらいヒリヒリしていて(笑)。これまでももちろん怖かったけど、5期は肌にまとわりつくようなリアルさがあります。悠木さんとは前の事務所で一緒だったんですけど、そのときのマネージャーが悠木さんに『この役は絶対に悠木さんにしかできない』と言っていて、その最たるものが5期で遺憾なく発揮されています。5期は、麻美ちゃんの話になりがちではありますが、千鶴と和也の関係も大きく動きます。ずっと平行線だった二人の関係性に、ある種のピリオドが打たれているような展開もあるので、そこも楽しみにしつつ、ハラハラしてご覧いただけるんじゃないかと思います」
「かのかり」には、千鶴や麻美以外にも個性豊かで魅力的なヒロインが登場する。更科瑠夏役の東山奈央さん、桜沢墨役の高橋李依さん、八重森みに役の芹澤優さんといった豪華声優がヒロインたちを演じている。
「現場の雰囲気はあんまり変わらないんです。新キャラとしてみにちゃんが登場して、芹澤さんが入ってきても、雰囲気は一緒なんです。いい意味でゆるくて和やかな現場です。4期も怖い展開はあったけど、和やかな空気でした。1、2期の頃は収録が夕方帯だったから、終わったらみんなでご飯に行ったりしていましたし、ほかの現場で『かのかり』の共演者の方と会ったときも、僕は勝手に絆を感じています」
「かのかり」は、和也と千鶴を中心とした物語だ。千鶴役の雨宮さんとのコンビネーションも抜群だ。
「天ちゃんとは『かのかり』で初めて共演させていただいたのですが、最初はクールビューティーで近寄りがたい雰囲気だと勝手に感じていたけど、蓋(ふた)を開けたら全然そんなことがなくて(笑)。ハツラツとしていて、誰に対しても平等で、姉御肌でもあります」
どのヒロインも個性豊かだが、堀江さん自身が気になるキャラクターについて聞いてみると……。
「観点によりますが、“気になる存在”という意味でいうと圧倒的に麻美ちゃんですね、やっぱり。麻美ちゃんの根底の部分が気になる。ただ、僕もやっぱり千鶴が気になります。王道ですしね。瑠夏ちゃんも可愛いけど、距離感やグイグイくるところがちょっと怖くて。墨ちゃんも可愛いけど、か弱すぎるかな。みにちゃんとは恋愛する感じじゃないだろうし」
和也はダメな男かもしれないが、段々と愛すべきダメな男になってきた。賛否両論があるのは分かるが、何かを語りたくなる魅力のあるキャラクターであることは間違いない。その魅力は、堀江さんの演技に寄るところも大きいはず。今後も和也の動向、堀江さんの演技にぜひ注目してほしい。(阿仁間満/MANTANWEB)
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