俳優の齋藤飛鳥さんが、東野圭吾さんの小説が原作の劇場版アニメ「クスノキの番人」（伊藤智彦監督、2026年1月30日公開）に声優として出演することが分かった。齋藤さんがアニメで声優を務めるのは初めてで、大学生の佐治優美を演じる。同作は、「その木に祈れば願いがかなう」と伝えられるミステリアスなクスノキと、その番人となった青年・直井玲斗の物語で、優美は家族に内緒でクスノキへ通う父親の秘密を探ろうと玲斗に協力を求めることになる。

　齋藤さんは「声優としての出演は初めてでしたが、声だけで思いを届けるという表現に向き合う日々は、とても新鮮で、今の自分にとってかけがえのない時間となりました。アフレコでは、伊藤監督からさまざまなディレクションをいただきながら、少しずつ役との距離を縮めていけたように思います」とコメント。

　「私が演じる佐治優美は、明るく真っすぐで、人との距離を自然に縮められるような、柔らかさのある女の子です。最初はその元気な一面が印象に残りましたが、演じていくうちに、その胸の奥にある、大切な人を思いやる優しさに触れていきました。彼女が家族とどう向き合っていくのか。その関係性の変化にもぜひ注目していただけたらうれしいです。物語の中で描かれる『祈る』という行為には、深い意味が込められていると思います。誰かのために祈り、その思いが確かに届くということに、シンプルでありながら、とても力強いメッセージを感じました。この作品に込められた“祈り”が、見てくださる方の心にも届くことを願っています」と語っている。

　齋藤さんのほか、追加キャストとして、宮世琉弥さん、大沢たかおさんが出演することも発表された。宮世さんは、老舗和菓子メーカーの跡取り息子で家業継承のためクスノキへ通う大場壮貴、大沢さんは優美の父親で、家族に秘密にしながらクスノキへ通う佐治寿明をそれぞれ演じる。

　宮世さんは、「声だけで感情を届けるお芝居の難しさもありましたが、大場壮貴という役と真っすぐに向き合うことで、多くの気づきや学びを得ることができたと思います」とコメント。「作品のイメージから『難しそう』と感じる方もいるかもしれませんが、小さなお子さんでも楽しんでいただける作品になっていると思います。誰かの記憶や気持ちが、今を生きる人へとそっと手渡されていく──そのあたたかさを、スクリーンを通して感じてうれしいです」と話している。

　大沢さんがアニメに声優として出演するのは、2012年公開の「おおかみこどもの雨と雪」以来となる。演じる佐治寿明について「一見するとごく普通の父親に見えるかもしれません。けれどその“普通”の中には、家族への深い思いや、言葉にしきれない葛藤が息づいていて、人間らしさがにじんでいる。きっと多くの方が、ご自身や大切な誰かを重ねて感じていただける人物だと思います」とコメント。作品の魅力について「原作には大人の視点が丁寧に描かれており、そのまなざしがアニメにもきちんと反映されています。誰かに思いを託すこと、これまでに受け取ってきたものを静かに振り返ること──そうしたテーマが、そっと心に響いていく。どの世代の方にもすっと寄り添ってくれるような懐の深さも、この作品の大きな魅力だと思います」と語っている。

　クスノキの番人を命じられた玲斗と、番人になることを命じた叔母・柳澤千舟、クスノキが描かれた本ビジュアルが公開された。予告映像も公開され、玲斗がさまざまな理由でクスノキのもとを訪れる人々に翻弄（ほんろう）されながら、クスノキに隠された謎に迫っていく様子が描かれている。

　東野さん原作の「ガリレオ」シリーズや、NHKの連続テレビ小説（朝ドラ）「半分、青い。」、劇場版アニメ「名探偵コナン 隻眼の残像」などで音楽を担当した菅野祐悟さんが音楽を手がけることも発表された。「クスノキの番人」のオリジナルサウンドトラックCDが2026年1月30日に発売される。

　同作の特製しおり型ムビチケカードが11月21日に発売される。

　「クスノキの番人」（実業之日本社）は、2020年に書籍が刊行され、累計発行部数が100万部を突破している小説。「その木に祈れば願いがかなう」と伝えられる、ミステリアスなクスノキと、その番人となった青年の物語が描かれる。理不尽な解雇により職を失った青年・直井玲斗は、追い詰められた末の過ちで逮捕される。突然現れた弁護士に「依頼人の指示に従うなら、釈放する」と言われ、その条件をのんだ玲斗の前に現れたのは大企業・柳澤グループの発展に大きく貢献してきた人物であり、亡き母の腹違いの姉の柳澤千舟だった。千舟が玲斗に命じたのは、月郷神社にたたずむクスノキの番人になることだった。クスノキの謎は、玲斗の人生をも巻き込みながら思いもよらぬ真実へと導いていく。

　アニメは、「ソードアート・オンライン」などで知られる伊藤さんが監督を務め、「ソードアート・オンライン」「俺だけレベルアップな件」などのA-1 Picturesがアニメを制作する。俳優の高橋文哉さんが主人公の青年・直井玲斗、天海祐希さんが主人公の叔母・柳澤千舟を演じる。