岡本信彦:「ヒロアカ」インタビュー 爆豪勝己の初勝利に万感の思い 命を削り向き合った“ヒーロー”
配信日:2025/10/26 9:31
「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載された堀越耕平さんのマンガが原作のテレビアニメ「僕のヒーローアカデミア」の最終章となる“FINAL SEASON”が、読売テレビ・日本テレビ系で毎週土曜午後5時半に放送されている。10月25日放送の第163話「“個性”!!爆破!!」では、心停止から復活した爆豪勝己がオールマイトの窮地を救い、巨悪のオール・フォー・ワンを撃破する展開がファンの間で話題になった。2016年に放送を開始したテレビアニメ第1期から爆豪勝己を演じてきた声優の岡本信彦さんに収録の裏側、爆豪勝己への思いを聞いた。
◇「ようやく勝てたね、かっちゃん」
爆豪がオール・フォー・ワンを倒すという展開に、岡本は「うれしかったですね」としみじみ語る。実は4年前の2021年の時点で、岡本さんはこの展開を原作者の堀越さんから聞かされていたという。
「以前、堀越先生から『今後こうしようと思っています』ということで教えていただいて。その段階からうれしかったのは覚えてはいます。その時おっしゃっていたのが、爆豪は悔いが色濃く残っていると。それはなぜかというと、先生の言葉を借りるならば『オールマイトを終わらせちゃった』と思っているから。そんな終わらせてしまった男がオールマイトを終わらせないというのが一番描きたいところだとおっしゃっていて、『それはとてもいいシーンですね』と。そこから、いつ来るんだろうと思いながら収録してました。ただ、原作を読んでいたら爆豪の心臓が止まってしまったので『えっ?』みたいな。その部分は聞いていなかったので。一度倒された衝撃よりも、ここからどうやって復活するんだろう?というほうにドキドキして見ていた気がします」
岡本さんは、かなり重要な展開を先に知ることになり、「ずっと誰にも言えなかったんですよ。(山下)大輝くんにも言えず、スタッフさんにも、仲間内にも誰にも言えない。責任みたいな、爆弾みたいなものを背負いながら収録していた気がします」と振り返る。そうした状況もあり、爆豪の勝利に「ついに!」という思いが強かった。
「ようやくかっちゃんが『ちゃんと勝つ』という。デクには『勝利の権化』とずっと言われていたんですけど、実はこれまでちゃんと勝利したことがないんです。劇場版ではあるんですけど、テレビシリーズでは、敵<ヴィラン>、巨悪に対してちゃんと一人で戦って勝っているシーンが意外とない。それが、オールマイトにとって宿敵と言われている存在をちゃんと倒した。仇討ち、師匠越えという意味合いも含めて、『ようやく勝てたね、かっちゃん』と、こっちまでうれしい気持ちになりました」
岡本さんは、今回の勝利を「ずっと負けてきたかっちゃんの初勝利」だと語る。
「かっちゃんは、ずっとイライラしている人だと思います。今までずっと負けまくりで、轟に勝ったかと思ったら相手が本気を出していなかったりして、敵<ヴィラン>にも拉致されてしまって。オールマイトの秘密を言ってもらえていなかった時期もあって、不憫(ふびん)だったんです。だからか、かっちゃんは作中トップクラスで泣いているんですよね。それが、『デクvsかっちゃん2』(第3期の第61話)からようやく壁が外れて、オールマイトの秘密をかっちゃんも知るようになって。演じていても、そこから流れが変わったような気がするんです。戦わなきゃいけない相手がより明確になった。ただ、そこからも倒されてしまったり、ぐちゃぐちゃにされる中でようやくもぎ取った勝利だと思います」
◇「戦ってほしくない」と思ったことも 爆豪勝己への思い
第1期から爆豪を演じてきた岡本さんだが、第6期の時点では「かっちゃんがどこまで強さのインフレに耐えられるかというところがすごく心配で。あまり戦ってほしくないという思いが実はあるんです」とも語っていた。
「そうですね。僕はインフレには耐えられないと思っていたので。爆破の“個性”じゃ無理だよって。だから、出久もそうなんですけど、かっちゃんはすごく少年マンガしているなって感じがします。自分の持っていた爆破というインフレに耐えられなさそうな“個性”で、ちゃんとインフレに乗っかって、最強の“個性”を持ったオール・フォー・ワンに努力で勝つというのが半端ないなと思います。むしろ『信じてあげられなくてごめんね』という感じでした」
また、爆豪の“勝ち方”にも驚いたという。
「単純な“個性”の増幅で強くなると思っていたのですが、爆破の玉を汗で覆うとか、周囲のものを爆発させて移動するとか、想像もしなかった戦い方でした。そういった発想、戦闘センスで勝つとは思わなかったんです。戦闘センスって、もちろん才能もあると思うんですけど、努力という感じがよりしました。超常的なパワーじゃなくて、頑張れば到達できそうな範囲で勝つというのがすごいなと純粋に思いました」
「ヒロアカ」では、爆豪を含めどのキャラクターも“プルスウルトラ”し続けている。岡本さんに爆豪を演じたことで得たものを聞いた。
「ここまで命を削りながら演じるキャラクターにはもう出会えないかもしれないと漠然と思っています。そこまで求められる展開、キャラクター性、現場は、『ヒロアカ』を逃すと、もう本当に指折り数えるくらいしかないかもしれない。僕にとって爆豪勝己は命を削りながら演じるキャラというか、自分を犠牲にしてでも演じたいキャラクターですし、作品だと思いながらやっています」
岡本さんにとって爆豪は「ヒーローに近い」存在だという。
「爆豪を演じることで得たものがやっぱり多いんです。仕事もそうですし、みんなから『いいお芝居でした』と言われることもそうですし、そこまで思いをはせながら、泣きながらマイク前で演じるキャラクターに出会えました。第7期の『なァ出久 俺まだおまえに追いつけるかな』というセリフは泣きながら録(と)っていたんです」
最後に“FINAL SEASON”の今後の見どころを聞いた。
「出久たちが、どう最高のヒーローになるかというのは、みんなが気になるところだと思います。途中から、出久の語りが『僕が最高のヒーローになるまでの物語』から『僕たちが最高のヒーローになるまでの物語』になっているんですけど、それがどういう世界なのか。また、死柄木と出久の戦いがどういう決着を迎えるのか、それぞれのキャラクターたちの戦いがどうなるのか、その後の行く末を楽しみにしてもらえたらうれしいなと思います」
提供元:MANTANWEB











