山下大輝&沖野晃司&八代拓:「しゃばけ」インタビュー(2) 一太郎、仁吉、佐助の独特な関係性を表現 アニメならではの魅力
配信日:2025/10/25 8:02
インタビュー(1)の続き 畠中恵さんの人気小説「しゃばけ」シリーズが原作のテレビアニメ「しゃばけ」が、全国フジテレビ系のアニメ枠“ノイタミナ”で毎週金曜午後11時半に放送されている。シリーズ累計発行部数が1000万部を突破している時代劇ミステリーで、江戸時代を舞台に、江戸の大店(おおだな)・長崎屋の病弱な若だんな・一太郎と、その周囲の妖(あやかし)たちが難事件、珍事件を解決する……というストーリー。テレビアニメで一太郎を演じる山下大輝さん、長崎屋の手代(てだい)で正体は白沢の仁吉役の沖野晃司さん、同じく手代で正体は犬神の佐助役の八代拓さんに収録の裏側、作品の魅力を聞いた。
◇三人が噛み合ってくる瞬間 垣間見える愛情の形
--ストーリーを重ねるごとに、一太郎、仁吉、佐助の関係性がただの主従関係ではない独特のものであるように感じられます。三人の関係性をどう捉えていますか。
山下さん それぞれに矢印があって、それがだんだん噛み合ってくる面白さがあるなと思います。いわゆる任務として、一太郎を守っている二人の矢印が正直痛い。なんていうか、嫌なんですよね(笑)。
八代さん はっきり言うじゃないですか(笑)。
--一太郎が二人に縛られているような?
山下さん そうなんです。会話の中で、自分の言葉が二人に届いていないことがつらいというか、有無を言わさない感じがある。
八代さん 二人は一太郎のために「こうしなければいけないですよ」「これはしてはいけません」と言っているけど、そこに一太郎の気持ちがないというか、ある種、事務的。
沖野さん たしかに「任務」というのはすごく分かります。
山下さん そこのちょっとした気持ち悪さから、だんだんちゃんと噛み合ってきて、ちゃんと会話をしていくようになっていく。この変化が僕としては、すごくうれしかったです。最初は、愛よりも先に何かがあるというか、一見仲が良さそうに見えるんだけど、その裏に隠れた気持ちがあるゆえの違和感があったなと。
八代さん 本当にそうだと思います。この三人のあり方も、物語の中で変化、成長していく。
沖野さん それこそ親心じゃないですけど、一太郎に何か起こってからじゃ遅いという感情のもと、結構縛りつける。この行動がすごく思春期の子供の親っぽいというか。でも結局、子供も大人になってみたら感謝しているし、親も折れなきゃいけないところがある、という。そういう関係性の構築がしっかりと作品の中でも行われている。愛情ってやっぱり一辺倒じゃないし、片方の矢印だけじゃ絶対にまかり通らないんだなと。
--三人の関係性を通して、愛情の形が見えてくるような?
山下さん そうですね。それが面白いところですね。
--そうした独特な関係性の三人を演じた感想は?
沖野さん 山下さんは、体が悪い若だんなを演じているのに、芯の強さが分かるのはすごいなと思いました。単に病弱なキャラクターを演じるとなると、はかない、悲しいという方向に行くのが、強さが匂ってくるみたいな。
八代さん たしかに、常に頭が回っている感じというか。一太郎って、いろいろな人に気遣われて、自分も気遣って、妖にも触れて、さまざまな経験をして、その中ですごく考えてきたからこその思慮深さ、行動力があると思うので、言葉も常に考えて発しているんだろうなと。それを表現している山下さんはすごいなって。
山下さん うれしいですね。僕から見ると、仁吉のアプローチって、難しいと思うんです。ただクールにすればいいだけじゃないというところで、いい感じに声が角張っていて、「これはてこでも動かないな」という硬さを感じたんですよね。
--仁吉は、一見優男で、柔らかそうな印象もあります。
山下さん そうですよね。スマートだし、多分お客さんにはそういう部分もあるんだろうけれど、対一太郎の時のつけいる隙が無い硬さが、もう鉄壁だなと思って。佐助の場合は、その硬さとは反対に、柔和な部分と単純な部分のギャップがあるけれども、根はやはり妖なんだなと。どっちが怖いかと言われたら佐助のほうが怖いなと。
沖野さん そう思います。
山下さん 佐助がひとたびプツンとキレた時のヤバさというか、犬神という超ド級の妖なんだなという説得力を出せるのは、やっぱりさすがだなと思って聞いていました。
--一太郎は、鉄壁の仁吉と、実はかなり怖い佐助に挟まれているという。
山下さん 逃げ場所がなさすぎるから、一太郎は一人で行くしかなくなる。そういったがんじがらめ感をお二人が表現されていて、お互いに隙間を埋めるのがうまいなと思っています。
◇濃すぎるキャラクターたち 江戸時代ならではの光、音
--「しゃばけ」には、魅力的なキャラクターが多く登場します。注目してほしいキャラクターは?
八代さん 僕は、野寺坊(高橋伸也さん)と獺(かわうそ、冨岡美沙子さん)です。ちょちょっと出てきて、ちょちょっと場をにぎやかして、たまに重要なことを言ってと、いろいろな役割をするんです。ずっと登場するキャラクターではないんですけど、この作品を彩るにあたって大事ですし、収録でもお二人が漫才をやってらっしゃるみたいで(笑)。
沖野さん 職人でしたね。
八代さん しかも、回を重ねるごとに息が合ってきて、見たくなっちゃうんです。
山下さん 可愛いですよね。二人とも奔放で、おいしいものを食べて楽しいことを探して歩いてるんだろうな、みたいな。
八代さん こんなふうに生きたいなって。
沖野さん 「しゃばけ」は、名前が付いていないようなキャラクターも濃いんです。僕は若だんなを駕籠(かご)に乗せて運ぶ二人に注目してほしいです。「えっほえっほ」という声を高橋伸也さんが担当されていて、最初は音響監督の菊田浩巳さんがディレクションしていたのですが、最後のほうは何のディレクションもなくなって。
山下さん 高橋伸也さん、さすがですよね。僕は、注目キャラとして屏風のぞき(浪川大輔さん)を挙げたいと思います。
--屏風のぞきは、一太郎の部屋にある古い屏風の付喪神で、一太郎が家からこっそり抜け出す際に手助けをすることもあります。
山下さん 一太郎とは密接な関係性で、仁吉、佐助とはまた違った絆を感じるんです。ぶつくさ言いながら手伝ってくれる、悪いことを教える兄ちゃんみたいな感じで、一太郎のことを応援してくれている。そこまで行き着いた経緯が気になっちゃってしょうがないんです。絆を感じさせるその裏に何があったのかな?と考察する楽しみがすごくあるキャラクターだなと思います。
--最後に「しゃばけ」のアニメならではの魅力を教えてください。
沖野さん 多種多様のキャラクターが登場する中でのミステリーは本当に見どころです。見てくださっている方も「えっ、これどうなるんだろうな」という瞬間がたくさんあると思います。とにかくキャラが濃くて、最終回まで見終わった後に「このキャラ良かったよね」みたいな会話を改めてしたいと思うくらいのボリュームのキャラクターになっていると思います。
八代さん アニメになるからこそ、音の意味合いもすごくあると思っています。この時代は、障子の音や、木製の橋を渡っている時の足音など、すごく音が聞こえる時代だと思うんですよね。その中で、アニメーションのBGMもすごく彩ってくれる。そのあたりもぜひ楽しんでいただきたいです。
山下さん 江戸時代の街並みや、実際の暗さが表現されていると思います。本当に真っ暗の中、提灯の灯りだけを頼りに歩くって、どんな目線なんだろう?と。今の時代は、街灯があるのが当たり前で、みんな携帯を持っているけど、あの時代はほんのりとした優しい光しかない。時代背景にすごく向き合って丁寧に作られているからこそ、タイムスリップしたかのような感覚になれるところがアニメの魅力だなと思います。そこにファンタジー要素の妖が入ってくることによって、「何が起きるんだろうか?」というワクワクもある。さらにミステリーの謎解き要素もある。このめちゃくちゃおいしい組み合わせをアニメで体感してほしいなと思っています。
提供元:MANTANWEB











