ゾンビランドサガ:劇場版がゾンビィVSエイリアンになった理由 監督インタビュー
配信日:2025/10/25 7:01
ゾンビィ×佐賀×アイドル×コメディーがテーマのテレビアニメ「ゾンビランドサガ」の劇場版「ゾンビランドサガ ゆめぎんがパラダイス」が10月24日に公開された。佐賀を舞台に、ゾンビィになった少女たちによるアイドルグループ「フランシュシュ」の活躍を描くオリジナルアニメで、第1期が2018年10~12月、第2期が2021年4~6月に放送された。2021年10月に“映画化”されることは発表されていたが、約4年の時を経て、ついに公開されることになった。劇場版は、宇宙人(エイリアン)が佐賀を攻撃し、「フランシュシュ」が立ち向かうことになるという衝撃的な展開になり、唯一自我を取り戻していなかった“伝説の山田たえ”がついに覚醒することも話題になっている。劇場版はなぜゾンビィVSエイリアンになったのか? 宇田鋼之介総監督、佐藤威監督、石田貴史監督に聞いた。
◇発表から4年 時間がかかった理由
ーー3人はテレビアニメシリーズに参加しています。そもそも「ゾンビランドサガ」に参加することになった経緯は? 宇田総監督は、テレビアニメシリーズの監督の境宗久さんとは「ONE PIECE(ワンピース)」なども一緒に手掛けていますが。
宇田総監督 境君とはずっと一緒にやってましたからね。MAPPAでも一緒になりましたが、偶然なんです。境君は「ゾンビランドサガ」を作るためにMAPPAに入ったけど、僕は別作品を作るためで、お互いMAPPAにくるとは知らなかったので、なんでいるの?みたいな感じでした。
佐藤監督 境監督は先生的なポジションだったんです。新しいオリジナルアニメを制作する際、これから演出をやっていこうという人を集めて教えていただくことになって、そこに参加させていただきました。
石田監督 僕は別の会社でCGや撮影をやっていて、MAPPAに入り、演出にも興味があったので、「ゾンビランドサガ」のお話をいただいて、参加させていただくことになりました。
ーー「ゾンビランドサガ」の魅力を劇場版でどのように表現しようとした?
宇田総監督 映画を作ることになって、僕と2人(佐藤監督と石田監督)という座組みで始まりましたが、全くノープランでした。第2期の最後に謎の2カットがあって、あれだけが境君の置き土産だった。これをどうするのか?というところから始まり、プロモーションビデオでした!としてしまうこともできるけど、みんなで話し合った結果、がっつり正面から向き合うことになりました。「ゾンビランドサガ」は、フランシュシュが向き合う出来事がどんどん大きくなって、彼女たちの存在も大きくなります。ここまできたら、宇宙侵略しかない。佐賀から飛び出して、世界的なアイドルになることを踏まえつつ、アイデアを練り込んでいきました。
石田監督 僕は演出歴があまりないので、ほかの作品と比べるのが難しいのですが、「ゾンビランドサガ」はファンが温かく、ファンに育てていただいたように感じています。ファンに愛されている作品で、映画を待たせてしまいましたし、期待を裏切らないようにしたかった。みんなで、ああでもない、こうでもないと話し合いながら作ってきました。
佐藤監督 笑えるし、泣けるし、たまにすごく熱くもあり、そういう部分をひっくるめて、「ゾンビランドサガ」なので、それを映画でも表現しようとしました。
ーー発表から約4年たちましたが、ここまで時間がかかった理由は?
佐藤監督 アイデア出しから始まって、アイデアがどんどん積み上がって、ようやくこの形になったのですが、そこに時間がかかってしまいました。
石田監督 ボツになったネタもありますし。
佐藤監督 佐賀に干潟があるから、その干潟を求めて宇宙人が地球にくるという竹中さん(竹中信広プロデューサー)のアイデアもありました。宇宙人にとって干潟が環境に合っていて、地球全部を干潟にする作戦のために侵略するという。
石田監督 宇宙人が佐賀にきたのは、佐賀の形がアメリカ大陸に似ているから間違えたというのもありましたね。
ーー約4年前に公開された“映画化”決定を告げる実写映像もありましたが、本編との関係は?
宇田総監督 全くないですね(笑)。そこも「ゾンビランドサガ」らしさです。こじつけですけど、関係のあるシーンはないわけではないのですが。
ーー山田たえの覚醒は、企画当初から予定していた?
宇田総監督 最初はなかったのですが、アイデアを出し合う中で生まれました。たえは実は細かい設定がいっぱいあるんです。ここでは言えないようなこともあって、この映画を見ると新たな謎も生まれてくるところもあるのですが、出しすぎない方がいいですしね。
◇SFアニメとしてしっかり考察
ーー3人の役割分担は?
宇田総監督 僕は2人がやりやすいようにバックアップしていました。
佐藤監督 パートを分担することになって、それぞれやりたいところを言ったら、自然に分かれていましたよね。
石田監督 そうですね。たまたまやりたいことがかぶらなかった。宇田さんは、揺るがないご意見番のようで、コンテにすると2時間半くらいになってしまったけど、宇田さんに調整するのを手伝ってもらったり。
宇田総監督 2人とも頼もしかったですよ。それぞれに持ち味があって。発揮していました。だから任せっぱなしだったところもあります。佐藤君は日常芝居にこだわりがある。石田君はSF的な画作りとライブシーンを粘り強くやってくれました。
ーー3人とも世代が違うようですが。
佐藤監督 10歳ずつくらい違うんです。
宇田総監督 僕はもうちょっと離れているよ(笑)。アイデア出しの時、映画の話になっても世代によってそれぞれ見ている映画が違うから、面白いんですよね。自分では思いつかないアイデアも出てきますし。
石田監督 元々、SF映画が好きだったのですが、改めて見直しました。
宇田総監督 例えば宇宙人や宇宙船のデザインは「スター・ウォーズ」っぽくならないようにしたいという話はありました。ロマン・トマさんにデザインしていただいたのですが、生物感があって一発でOKが出た。宇宙船のデザインも従来とは違う形にしたくて、ロマンさんにシェーバーっぽいデザインにしていただいた。面白いアイデアが積み重なってできたんです。
ーーSFアニメとしてもこだわった?
宇田総監督 下調べもがっつりやっています。サーモカメラを実際に借りて技術的な考察もしました。サーモグラフィ協会の方の話がヒントになることがあったり。
石田監督 真面目に考察しています。
◇全部出し切った
ーー石田監督が担当したライブシーンも見どころです。
石田監督 2曲のライブシーンを通してたえの変化を見せようとしました。1曲目は、実際のアイドルのライブのような見せ方を意識していて、2曲目はキャラクターにより寄っていくような構成にしました。
ーー佐藤監督のこだわりは?
佐藤監督 たえが覚醒し、「フランシュシュ」のメンバーとどう関わっていくか?というところです。ゾンビバレに冷や冷やするシーンもあります。キャラクターの感情を含めて表現しようとしています。テレビシリーズでもゾンビバレのシーンはありましたが、今回は少し肌触りが違うかもしれません。
ーーファンにはうれしい小ネタもたくさん用意されているようです。
佐藤監督 テレビシリーズもそうですが全部やり切ろうとしました。
石田監督 そうですね。全部出し切っています。
宇田総監督 細かいところですが、画面の隅っこでキャラクターが変な動きをしていたり、一度見ただけでは見落としてしまうくらいいろいろ入れています。
ーー難しかったことは?
石田監督 ライブシーンですね。感情をどう表現するのかすごく考えました。
佐藤監督 最初は1曲の予定でしたが、石田さんが「このシーンは絶対に2曲じゃないとできない」と言って2曲になったんですよね。
石田監督 曲の尺も短くする案もありましたが、尺がないと見せられないものもあるので、長くさせていただきました。
宇田総監督 ライブは「ゾンビランドサガ」で重要な要素だし、ファンの方に満足していただくボリュームにしたかったですしね。第2期の最終話のライブシーンもたっぷりありましたし、あれに負けないものにしたかったんです。
ーーさらなる続編に期待するファンも多い。
宇田総監督 今回はやり切ったので今は抜け殻ですね(笑)。でも、皆さんの反響を受けて、半年もたったら、また作りたくなるんですよね。
石田監督 そうですね(笑)。
佐藤監督 今は空っぽですけど(笑)。
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