山寺宏一:「宇宙戦艦ヤマト」インタビュー 富山敬さんは「大好きな尊敬する先輩」 「3199」はデスラーの「フッ」に注目
配信日:2025/10/05 7:01

人気アニメ「宇宙戦艦ヤマト」シリーズのリメーク最新作「ヤマトよ永遠に REBEL3199」の第四章「水色の乙女(サーシャ)」が10月10日に上映された。全七章で、4月11日に上映された第三章「群青のアステロイド」の最後にデスラーが登場したことも話題になった。リメークシリーズでデスラーを演じる山寺宏一さんに「宇宙戦艦ヤマト」への思い、「3199」の収録について聞いた。
◇富山敬さんの忘れられない言葉
「宇宙戦艦ヤマト」は1974年にテレビアニメ第1作が放送され、50年以上にわたって愛されている。山寺さんは第1作を見て衝撃を受けたという。
「中学1年生の時に放送が始まり、初回からリアルタイムで毎回欠かさず見ていました。なぜリアルタイムかというと、当時は録画機能がなかったからです。再放送は簡単にしていませんでしたしね。どこかでウワサを聞いて、第1話を見て衝撃を受けました。当時は大人も見られるアニメはそんなになかった。そろそろアニメを卒業かな……という時期でしたが、これまで見てきたアニメとは全然違いますし、夢中になって一回も欠かさずに最後まで見ました」
当時は、富山敬さんが演じていた古代進のモノマネをしていたという。デスラーに魅力を感じていた。
「デスラーは悪役なのに、格好いいんですよね。恐ろしいんだけど、格好いいし、伊武雅刀さんの声がとにかく素敵で、それまでのアニメの敵役とは違いましたし。敵なんだけど魅力的ですし、人間ドラマとして見ていたんでしょう」
富山さんは1995年に亡くなり、山寺さんは『宇宙戦艦ヤマト 復活篇』などで古代を演じることになる。
「びっくりですよ。僕は敬さんが大好きなんです。ほかの作品でも、敬さんだったらこう演じるんじゃないか?と考えながら演じてみたことがあります。敬さんは、いろいろな役をやられていましたが、役に合わせて作っている感じではなく、声色も極端に変えないけど、自然で素晴らしい演技なんです。吹き替えで、敬さんのイメージでやったらぴったりじゃないかな?と思って演技をしたら、敬さんがその作品の主役をやっていたことがあって、ちょっと困りました(笑)」
富山さんについて「大好きな尊敬する先輩でした」と語る。
「とにかく優しい方でした。厳しい先輩も多かった時代ですが、敬さんは穏やかで、誰にでも優しかった。一度だけ二人でランチを食べたことがあったんです。休憩で店に入ったら、敬さんが一人でいらっしゃって、出ていくわけにもいかないじゃないですか。『山寺君、一緒に食べよう』と誘っていただき、二人きりで話しました。ものすごく緊張したけど、その時も優しかったです。『山寺君はいいよ。二枚目も三枚目もできる。僕なんて二枚目をやる時は構えてやらなきゃいけないから』と言っていただいて、すごくうれしかったことをいまだに覚えています。や」
◇デスラーが“縁”と言うとは
「宇宙戦艦ヤマト2199」から始まったリメークシリーズで、山寺さんは、デスラーを演じることになった。「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」「宇宙戦艦ヤマト 2205 新たなる旅立ち」を経て、デスラーは変化していった。そして「3199」では第三章「群青のアステロイド」のラストにデスラーが初登場した。
「『3199』に出られてよかったです(笑)。なかなかお呼びが掛からないので、素直にうれしかったです。あんなことをガミラスにしたデザリアムがどの面を下げて……とデスラー的には思いますよ。デザリアムは格好いいキャラクターもいるけど、明らかに悪そうなのもいるじゃないですか。カザンとか(笑)。デスラーはいろいろなことを経て、ガミラスと地球が和平を結び、古代やヤマトの気持ちが分かるようになってきたところで、再会します。そこにはサーシャの存在が大きく関わっていると感じました。自分が愛したスターシャの娘ですし、その存在には“縁”という理屈ではないものがあります。デスラーが“縁”と言うとはね。福井(晴敏)さんの本は改めてすごいと思います」
デスラーの「フッ」と笑うシーンも印象的だ。
「今回も『フッ』という芝居が多いんです。それがすごく大事で『フッ』の中にいろいろな思いが含まれています。口角を上げるのか、上げないのか、口を開けるのか、閉じるのか。実はすごく深いですね。馬鹿にしているのか、古代なら分かるだろうという意味なのか、サーシャに対してなのか……などといろいろな『フッ』があって、今回そのことを改めて感じました。難しいんですよ。百通りの『フッ』ができる声優と言われたいですね」
「3199」の各章の冒頭には、各キャラクターがこれまでのストーリーを振り返る映像が上映されている。第四章はデスラーがナレーションを務める。
「デスラーの思いが描かれています。劇場でぜひ見てほしいですね。うれしかったし、デスラー目線で見られるのも楽しかったです。たまに朗々としゃべることはあるけど、ここまで長いセリフはなかったですし。いつか(『「宇宙戦艦ヤマト」という時代 西暦2202年の選択』の)真田さんみたいにデスラーの語りで全部やってほしいですね」
◇「ヤマト」は常に緊張感がある
「ヤマトよ永遠に」「宇宙戦艦ヤマトIII」を原作に、新解釈を加えて再構成した「319」』では、潘めぐみさんが人気キャラクターのサーシャを演じていることも話題になっている。「ヤマトよ永遠に」では、めぐみさんの母・潘恵子さんがサーシャを演じており、母から役を引き継ぐことになった。
「めぐみちゃんとはいろいろな作品で共演しているし、バディー役もありました。何が素晴らしいかと説明できないくらい素晴らしいですね。これまでもいろいろな役をやっていますが、サーシャにはびっくりしました。めぐみちゃんと恵子さんは全然違う役者だけど、サーシャにはどこか恵子さんを感じるんです。今までめぐみちゃんから恵子さんを感じたことはないし、似ていると思ったこともなかった。すごく難しい役ですが、見事に演じていて、素晴らしい! めぐみちゃんが子供の頃、恵子さんと一緒にいるところにばったり会ったことがあったんですよ。『可愛いね!』なんて言ってね。それが今では共演しているんですから不思議ですよ」
古代進役の小野大輔さんは、山寺さんと共に大役を引き継いだ。
「『ヤマト』は群像劇だけど、やっぱり古代の物語です。古代が葛藤し、苦しみながら進んでいく。演じるのは大変だと思いますが、見事なんですよね。普段から小野君の人柄の良さを感じていますし、古代を真っすぐに演じているんですよね。役を引き継ぐのは大変です。どうしても皆さんのイメージがありますし、背負うものも大きい。僕もデスラーらしくあろうと思うけど、あざとくなってはいけない。自然にスッと入っていかないといけないんだけど、難しいんです。常に緊張感があります」
リメークシリーズは、偉大な先輩たちの思いを受け継いでいる。そこには“縁”があるのかもしれない。
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