市川蒼×松岡禎丞×花守ゆみり:「ガチアクタ」インタビュー 個性的な“掃除屋”を演じる挑戦 きれいじゃない感情、泥臭さも

配信日:2025/08/09 8:01

「ガチアクタ」に出演する(左から)松岡禎丞さん、市川蒼さん、花守ゆみりさん
「ガチアクタ」に出演する(左から)松岡禎丞さん、市川蒼さん、花守ゆみりさん

 「週刊少年マガジン」(講談社)で連載中の裏那圭さん、晏童秀吉さんのバトルアクションマンガが原作のテレビアニメ「ガチアクタ」が、7月からCBCテレビ・TBS系のアニメ枠「アガルアニメ」で放送されている。犯罪者の子孫たちが暮らすスラム街に生まれた孤児の少年・ルドは、ある日、身に覚えのない罪を着せられ、スラムの人々でさえ恐れる“奈落”へ落とされてしまう。そこで、ルドは、ゴミから生まれた怪物“斑獣”を倒す“掃除屋”アクタのエンジンにスカウトされることになる……というストーリー。ルド役の市川蒼さん、掃除屋アクタ所属のザンカ役の松岡禎丞さん、同じくアクタ所属のリヨウ役の花守ゆみりさんに収録の裏側を聞いた。

 ◇見ちゃいけないものを見せつけられる ルドの“怒り”の表現の裏側

 --作品の印象は?

 市川さん 原作の目力がすごく印象的でした。「ガチアクタ」を思い出そうとすると、まずルドの目が浮かんで、心を掴まれた感覚がずっとあります。作品としては“怒り”の印象があります。僕は学生時代に演劇をやっていたんですけど、いろいろなことへのフラストレーションをモチベーションにやっていたので、怒りが根底にあったんです。ルドと境遇や環境は全く違いますけど、ベースに怒りがあるというのは、すごく共感したポイントの一つでした。ルドの目線で自分も作品に没入していける感覚はすごくありました。

 松岡さん 初めて原作を読ませていただいた時、なんでこんなにも迫力があるんだろうと。先生の頭の中をのぞいているようで、表現したいことをそのまま制限なしに表現している感じを受けました。だから、すがすがしいというか。ストーリーも、なかなかに泥臭い部分がある。制作される中で、「これはダメだよ」と直しも入ったんじゃないかと思うくらいやりたい放題やっているなと思いました。

 花守さん お二人が話しているように、絵が印象的で、お話自体も独自の世界観で、ルドと一緒にその世界のことを知っていく形式なので、ルドの目線になって物語と対峙できる。読んでいて「もっとこの人たちのことを知りたい」「この世界のことを知りたい」と、探求心、好奇心をくすぐられる作品だなと常々感じています。どのキャラクターも、根底には怒りであったり、決してきれいじゃない感情が眠っている子たちだなと思っているので、読んでいて、見ちゃいけないものを見せられているような感覚になって、でも見たいという。色香のある魅力があり、それでいて泥臭いものも共存している不思議な作品で、やみつきになりますね。

 松岡さん 一回読んでみな、って感じですよね。

 市川さん 確かにそうですね。

 花守さん 本当に癖になる。

 --キャラクターの印象や、演じる上で意識していることは?

 市川さん ディレクションで最初に「もっと怒りを出してくれ」と言われました。ルドの怒りのピークは、第1、2話あたりだと思うので、第1話の収録の時に監督から「その怒りじゃ足りない」と言われて。「怒りをぶつけたい対象はいますか? 嫌いな人でも、憎んでいる人でもいいから、その人に向けてやってみてください」と。

 花守さん 追い詰めたディレクションですね。

 市川さん あまりこういう話をするもんじゃないと思いますけど、実はこの人生の中で1人だけ許せない人がいて。

 花守さん えー! そうなの?

 市川さん ずっと忘れよう、考えないようにしようと思うくらいムカつく人がいて、「その人に向けて一回やってみてください」と言われてやったものがシーンとして完成したという。怒りに対する表現のこだわりは結構強く感じました。

 花守さん 市川くんは、ずっと怒りと向き合い続けているんですね。

 市川さん そうですね。だから、ルドが怒るシーンは、僕の中のふつふつとした、煮えたぎった怒りが詰まっているとは思います。

 花守さん すごい。

 --松岡さん、花守さんが演じるザンカとリヨウは、ルドが落ちた“奈落”(=外界)で出会う掃除屋のメンバーです。

 松岡さん ザンカは、原作を読み進めていった上で、気持ちが分かる部分がすごく多いです。自分と性格的には全然違うんですけど、ザンカにあるバックボーンのラインが、昔の自分を思い出すみたいな部分もあって。元々僕は、原作を先読みしないタイプなのですが、登場シーンから「あっ、ザンカには何かあるな」と感じたので、先のほうを読んだら、「なるほどそういうことなんだ」と腑に落ちました。そのラインからザンカを作り上げていき、ぶっきらぼうの中にも芯が通っているところを大事にしています。

 --ザンカは、第3話で登場するやいなや、ルドと戦うことになりました。

 松岡さん ルドと戦うシーンが僕の中では難しかったです。僕は、アクションシーンに全部アドリブを入れたくなるタイプなのですが、これまではザンカのような強者の役をあまり演じたことがありませんでした。「ガチアクタ」では、テストの時はアドリブを入れてみましたが、自分の中で違和感があって、アドリブを入れることで焦っている感が出てしまうなと思いました。ザンカは、戦っている最中でも冷静に相手のことを見て判断しつつ、相手を気圧(けお)す、みたいな。その塩梅がものすごく難しかったです。アドリブを入れずに圧倒しているというお芝居って、どうすればいいのかな……という中で、どんどん固まっていった感じです。

 花守さん リヨウは、最初、声に表情をつけすぎないダウナーな、現代でいうギャルっぽい話し方にしてほしいというオーダーをいただきました。そこから自分でかみ砕いて。猫って、表情は変わらないけど、シッポの動きや所作で感情が伝わってくるじゃないですか。あんな感じの声音のお芝居にしたいなと思いながらリヨウのことを演じさせていただいています。

 ◇紡がれていく掃除屋の絆 「演じていても気持ちいい」

 --ルドが掃除屋に入ったことで、ストーリーが大きく動き出し、キャラクターたちも変化していきます。収録の中で互いに刺激を受けていることもありますか。

 市川さん ルドは、周りのいろいろな人間たちに振り回されたり、転がされたり、初めて受ける刺激が多いので、僕は掛け合う相手のキャラクターに委ねているところが結構大きいです。「ルドはこういう子だ」という芯はありますが、それ以外の部分は、外からの刺激を受けやすいように何も決めずに、柔らかくして収録に臨んでいるところはあります。最初は角張った硬い材質なんだけど、掃除屋の面々と触れていく中で、少しずつ関節が増えていくというか。柔軟になっていくところはすごく意識しています。

 松岡さん 掃除屋という組織にルドが来たことによって、波紋が立つんだなと思いました。それは、ルドがいわゆる天界の人というだけではなくて、ルド自身が何かを引き付けているんですよね。だから、ザンカとルドの出会いは最悪でしたけど、結果的にザンカも教育係をエンジンに頼まれたからではなくて、「しゃあないな」という感じになっている。ルドが主軸になって、みんなが一歩先、もう一歩先というように進んで、結束もどんどん固まっていく。会話のシーンでも段々と打ち解けていっているなと感じていただけると思います。あれは演じていても気持ちいいです。

 花守さん ルドが来る前の掃除屋のみんなは、同じ目的があってそこにいるけど、腹の中をあまり見せ合わない人たちだったと思うんです。それこそザンカもルドが来る前は、ガー!と感情を出すタイプじゃなかったと思うし。ルドという存在が彼らにとってすごく大きなきっかけだったのかなと感じています。その中でリヨウは相手の懐に入ることはするけれど、決して自分の懐には入れない、というところを意識しています。誰かの隣にいるシーンでは、さりげなくぬるっと「あなたにとって、私は信用に足る人でしょう」みたいなすり寄り方をすることを心掛けて、“敵”とは認識ができないお芝居にしたいなと思っています。見る人によっては、一番怖いキャラクターになりうるのかなと。

 ◇「芝居をしない」という挑戦

 --「ガチアクタ」で自身にとって新たな表現、挑戦になっていることは?

 市川さん やはり怒りを声に出すこと。その怒りも、自分の中だけで怒っているとか、冷静なラインではなくて、感情をむき出しにして人間臭さを出すというところは、この「ガチアクタ」という作品での挑戦になっています。年齢を重ねると、他者に向けて怒りを見せることって減ってくるじゃないですか。パワーもいるし、それをやっている自分が嫌になったりすることもある。だけど、ルドはもっとシンプルに生きている子だと思うので、感情をぶつけることを臆してはいない。そこに対しては、僕自身学びもあるし、こうなれたらいいなと思うところももちろんある。これまでも自分の引き出しの中にはあったんだけど、出さないようにしていたところを、無理やり引っ張られている感じです。

 松岡さん 僕は、3、4年前からずっと続けていることなんですけど、お芝居を極力しないということ。土台としては、役の上に立っているんですけど、その土台を維持しながら、とにかくその作品の世界で自然体でいるということを心掛けています。特に日常会話を聞いている人にとって「あ、これが日常なんだな」と思っていただけるように。一方、戦っているところでは、ザンカは一撃必殺の時だけガチになる。そうした緩急は、この職業のあるあるなんですけど、見せる時には見せて、日常のシーンでは収録現場がその作品の空間みたいなことをずっと心掛けてやっています。収録でもマイクに向かって声をかけていないんですよ。例えば、小西さん演じるエンジンとザンカが話すシーンは、マイクじゃなくて小西さんにかけてます。

 花守さん 松岡さんのお芝居のメリハリがすごく美しいって毎回思っているんですけど、お話を聞いて、すごく腑に落ちました。収録でも、松岡さんの背中を見ながら、空間をすごく意識されているのを感じていて、それを今言語化してもらって、やっぱり!と思いました。感動しました!

 松岡さん そんなこと言ったらピノキオになりますよ(笑)。

 花守さん どんどんなってもらって(笑)。

 --花守さんが挑戦になっていることは?

 花守さん 先程もお話ししたのですが、相手の懐に入りながら、でも自分の懐には入れないという、怖いお芝居をできるようになりたいと思っていたところにリヨウ役でお声がけいただいたので、これは自分の中にある「怖い」を試すチャンスだと、今も研究の日々です。どうやったら信用してもらえるかなって思いながら、でも自分(リヨウ)は信用していないというラインを、バランスを取りながらふらふら歩き続けるお芝居。それでいて、松岡さんがお話しされていたように、お芝居にならないようにするライン。それを当たり前のように彼女がやっているのを体現したくて。どうやったら自由気ままで底が知れなくて、でも信じちゃいそうになるリヨウの危うさを表現できるかなって思いながら演じてます。

 市川さん それはリヨウのお芝居からめちゃくちゃ感じます。本当に掴めそうなんだけど掴めない、雲みたいな感じというか。常にそこにいるんだけど、いつかいなくなっちゃうみたいな儚さとか危うさとか。でも、とある瞬間、リヨウがすごく真っ黒に見えることもあって、視界を奪われちゃうくらいの闇が多分あるんだろうなと。ほかのキャラクターが真っすぐにぶつかっていってる分、リヨウのふわふわした感じがすごく強調されて聞こえるので、花守さんのリヨウのお芝居はめちゃくちゃすごいなと思います。

 花守さん よかったです。一安心しました。

 声優陣が独自の世界観の個性あふれるキャラクターたちを生々しく表現する「ガチアクタ」。今後も熱い演技に注目したい。

提供元:MANTANWEB

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