ガンダム:「GQuuuuuuX」はなぜ生まれた? 「閃光のハサウェイ」第2部やハリウッド実写版も 50周年に向けた戦略

配信日:2025/08/03 13:01

「機動戦士Gundam GQuuuuuuX」の一場面(c)創通・サンライズ
「機動戦士Gundam GQuuuuuuX」の一場面(c)創通・サンライズ

 ガンダムシリーズは、来るべき2029年の50周年に向けてこれまでにない挑戦を続けている。同シリーズなどを手掛けるサンライズとエヴァンゲリオンシリーズなどで知られるスタジオカラーが初めてタッグを組んだ「機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)」が話題になったが、劇場版アニメ「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」の第2部や“ハリウッド実写版”など今後もさまざまな作品が控えている。同シリーズの映像事業の総責任者であるバンダイナムコフィルムワークスの取締役の小形尚弘さんに「GQuuuuuuX」や今後の展開について聞いた。

 ◇鶴巻監督に白羽の矢を立てた理由

 「GQuuuuuuX」は、これまでにない作品になった。「機動戦士ガンダム」「エヴァンゲリオン」シリーズはいずれも日本のアニメの歴史を変えた名作だ。「カラー×サンライズ 夢が、交わる。」というキャッチコピーの通り、夢のようなタッグとなった。「GQuuuuuuX」で“主・プロデューサー”を務めたカラーの杉谷勇樹プロデューサーは「機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)」に参加したことがあり、小形さんが「鶴巻和哉監督でガンダムを作りたい」と持ちかけたことをきっかけに“夢のタッグ”は実現した。

 「2018年頃に企画した『水星の魔女』以降の作品は、その時に立てた戦略が続いています。軸は二つあり、一つは、新規のファンを獲得していくこと。もう一つは既存のファンの方により楽しんでいただくことです。テレビシリーズは基本的に、不特定多数に向けて放送されるものなので、新しいファンを獲得するチャンスがあります。若い世代、ティーンエージャーに向けたガンダムを発信していきたい。一方で、ずっと応援していただいているファンの方により喜んでもらえる作品として『閃光のハサウェイ』や『SEED FREEDOM』などがあり、その二軸が重要だと考えています」

 「FLCL(フリクリ)」「トップをねらえ2!」や「エヴァンゲリオン」シリーズなどで知られる鶴巻監督に白羽の矢を立てたのは「新しいファンの獲得」を狙ったためだ。

 「『鉄血のオルフェンズ』が終わった頃、新規ファンの獲得を考えた時、企画したのが『水星の魔女』や『GQuuuuuuX』でした。鶴巻さんにお願いしたいと考えたのは『FLCL(フリクリ)』や『トップをねらえ2!』など若者に対して刺さる作品を作れる方だと見ていて感じていたからです。鶴巻さんに、新しいガンダムを作っていただきたいと考えたのが一番の理由です」

 「GQuuuuuuX」は宇宙世紀を舞台とした作品で、新規ファンを獲得しただけでなく、これまでのファンの心もつかんだ。

 「結果としてそうなったところもあります。元々のコンセプトは『水星の魔女』に近く、今の若者に『自分のガンダム』と思ってもらうことでした。『若者が抱いている不安、問題意識をガンダムで描く』というのが最初のオーダーで、鶴巻さんからは二つの企画を提案されたのですが、その一つが仮想戦記だったんです。『水星の魔女』は若い人がガンダムを見るきっかけになる作品を目指しました。一方で、『GQuuuuuuX』は『若い人が宇宙世紀作品を見るきっかけになるガンダムになれば』という話をしていました。宇宙世紀は奥が深く、ハードルが高いと感じる人もいるかもしれない。そのハードルを越えることができたのは、最初の想定通りだったところもあります」

 ◇このタイミングだったからできた

 「GQuuuuuuX」は、テレビアニメシリーズの放送に先駆けて、一部話数を再構築した劇場先行版「機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-」が1月17日に上映を開始した。劇場先行版は“ネタバレ”が伏せられたまま公開され、公開後に宇宙世紀を舞台とした作品で、1979~80年に放送された第1作「機動戦士ガンダム」でもおなじみの“赤い彗星”シャア・アズナブルやシャリア・ブルらが登場することが明らかになり、話題になった。伝統のある宇宙世紀の作品を他社であるスタジオカラーと一緒に作るというのは思い切った決断のようにも見える。

 「仮想戦記になったことは、我々としても大きな挑戦でした。この企画が社内で上がったら、果たして通っていたのか? 社内ではなかなかできなかったとも思います。他社であってもカラーさん以外だったら難しかった。宇宙世紀の仮想戦記をやるなら、世界中探してもカラーさん以上のスタジオはないと思い、これでいきましょうと方向性を決めました。当初アバンくらいの尺想定であったテレビシリーズの第2話にあたるエピソードを劇場先行版の冒頭に持ってくるという構成になったことにより、これまでのファンの方も巻き込み、結果的に想定以上になった」

 最終回には「機動戦士ガンダム」でアムロ・レイを演じた古谷徹さん、シャア・アズナブルを演じた池田秀一さん、ララァ・スンを演じた潘恵子さんが出演したことも話題になった。

 「古谷さん、池田さん、潘さんを含めて皆さんのご理解があったからこそ、できたことだと思っています。富野(由悠季)さん、安彦(良和)さん、大河原(邦男)さん含め発表前の段階で話をしています。例えば、20年前にできたのか?と言えば、分からない。ガンダムが46年続き、成熟してきて、『水星の魔女』などが若い世代に受け入れられてきました。このタイミングだったからできたことなのかもしれません。カラーさんだったことも大きかったと思います。カラーさんは、IPを自社で持っていることもあって、サンライズに近いところがあります。IPの扱い方が似ているところもあり、カラーさんを信頼していました」

 ◇今後も“夢のタッグ”はある?

 「GQuuuuuuX」はSNSでの盛り上がりが、人気を加速させたところもある。事前情報を出しすぎなかったこともあり、SNSでは先の読めない展開に驚きの声があふれた。シリーズへのつながりに興奮するファンも多かった。

 「昔は、テレビを見た翌日、学校で盛り上がることがありましたよね。そのコミュニケーションの体験を含めて日本のアニメ文化は続いてきたところもあります。その体験がSNSになり、今回は良い形で楽しんでいただけたと感じています。昭和のテレビの時代と違い、情報のコントロールが難しかったところもあるのですが、ファンの方に楽しんでいただけるように徹底しました。『GQuuuuuuX』のような“if”を取り扱った作品はこれまでも『ギレンの野望』などアニメ以外にはあって、さまざまな楽しみ方ができるようになっていたことも大きいと思います」

 長く続くシリーズではあるが、これまでも枠にとらわれず、新しいアイデアを取り入れてきた歴史がある。だからこそ「GQuuuuuuX」のような作品が生まれ、受け入れられたのだろう。サンライズとカラーのタッグのような展開は今後もあるのだろうか? 

 「“夢が交わる”というキャッチコピーもありましたが、これまでにないことですし、なかなかできるものではない。これからもいろいろな作品が生まれていきますが、全てが『GQuuuuuuX』のようになるかと言えば、そういうわけではありません。連発するとファンの方の感覚が麻痺してしまうでしょうし。これまでのバックボーンがあったからできたことなので、今後も『GQuuuuuuX』のような作品ができるように、50年、100年とシリーズを続けていかなければいけません」

 ◇世界戦略を加速

 50周年に向けて、今後は世界に向けた戦略をさらに進めていく。

 「二軸があるという話をしましたが、それ以外に海外、特に米国、欧州の展開も重視しています。海外でも人気はありますが、まだ広がりきっていないし、伸びしろがあります。50周年、さらにその先のことを考えると、もっと広げていかなければいけない。LEGENDARY(レジェンダリー)の実写版がキーになってきます。これまで以上にたくさんの方に楽しんでいただき、次の世代につないでいかなければいけません」

 「LEGENDARYの実写版」とは“ハリウッド実写版”のことだ。全世界で劇場公開されることが発表されており、「企画開発中です。早く皆様にお届けできるように頑張っています」という。日本のアニメが世界で受け入れられる中、グローバルな視点がこれまで以上に必要になってくるはずだ。

 「アニメの受け入れられ方が変化し、全世界の方が見ている時代になっています。日本のIPにとっては大きなチャンスです。そのチャンスを逃さないように、世界のIPと肩を並べられるようにしないといけません。意識が変化しているところもあります」

 ◇「閃光のハサウェイ」第2部や富野監督の新作はどうなる?

 村瀬修功監督が手掛ける劇場版アニメ「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」の第2部「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女」が今冬に公開されることも6月に発表された。「閃光のハサウェイ」は全3部となることが発表されており、第1部が2021年6月に公開された。第1部の公開から約4年たったこともあり、待望の新作となる。

 「お待たせしてしまいましたが、映像的には間違いなく最高品質になっています。新作は、原作の中巻に当たり、原作小説に一番要素を足しています。根本的なものを変えているのではなく、補足しているところが多い。ハサウェイとギギのクロスポイントで、重要なエピソードです。二人の心情にフォーカスされるので、原作のままではエンターテインメントとして難しいところではあるのですが、プラスアルファしたことによって、すごく面白くなっています。楽しみにしていただければ」

 第2部のサブタイトルは2021年9月に「サン オブ ブライト(仮題)」となることが発表されたが、「キルケーの魔女」に変更となった。

 「『キルケーの魔女』は原作小説にもありますし、最初からタイトルの候補としてありました。ハサウェイの内面の話になるので『サン オブ ブライト』と仮題を付けていましたが、ハサウェイだけでなく、ギギの話にもなってくるので、『キルケーの魔女』に変更しました」

 シリーズの生みの親である富野監督は「ヒミコヤマト」という新作を構想していることを発表している。今年、84歳になる“レジェンド”の新作も楽しみだ。

 「富野さんは『ヒミコヤマト』に取り組んでいて、サンライズとして全面的にバックアップしています。富野さんはガンダム以外のオリジナルの新作映画を作ってきていません。ガンダム以外の作品もたくさん作っていただきたい。個人的にも富野さんの作品を見ていないと、体の調子が悪くなる(笑)。富野さんの新作を早く見たいので全面的にバックアップしていきます。今年、84歳になるとは思えないくらいお元気です」

 30周年を迎える「新機動戦記ガンダムW」の新たなPVが公開され、10周年を迎える「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」の新たな展開が発表されたことも話題になっている。50周年に向けて挑戦は続く。

提供元:MANTANWEB

この記事をSNSで共有する

新着ニュース記事

人気のニュース記事

新着の診断コンテンツ

ショート漫画の新着記事

インタビュー・取材の新着記事

コラムの新着記事

めちゃマガで人気の記事

copyright(C)2016-2025 アムタス > 利用規約

サイト内の文章、画像などの著作物は株式会社アムタスあるいは原著作権者に属します。文章・画像などの複製、無断転載を禁止します。

  1. めちゃコミック
  2. おすすめ無料漫画コーナー
  3. めちゃマガ
  4. ニュース
  5. ガンダム:「GQuuuuuuX」はなぜ生まれた? 「閃光のハサウェイ」第2部やハリウッド実写版も 50周年に向けた戦略

めちゃマガとは?

電子コミックサイト「めちゃコミック」がお届けする、無料で読めるアナタの漫画情報マガジンです。

漫画がもっと面白くなった!

みんなにオススメしたい作品が見つかった!

漫画の新しい読み方に気づいた!

人生の1冊にめぐり合えた!

こんな運命の出会いをアシストできるように、独自の視点でたくさんの作品を紹介していきます。

【公式SNSでも情報を配信中!】

めちゃコミックとは?

CM・広告や口コミで評判の国内最大級・電子書籍サイトです。

テレビや映画で話題の最新人気漫画から定番作品、無料立ち読みまでラインナップも充実!

いつでもどこでも気軽に漫画を楽しめる毎日を提供します。

※めちゃコミックは、docomo / au / SoftBankの公式サイトです。

めちゃコミックについて詳しく見る