上田麗奈×小原好美:“衝撃作”「タコピーの原罪」インタビュー 生々しく 寄り添いながら難役に挑む 

配信日:2025/06/21 9:00

「タコピーの原罪」に出演する上田麗奈さん(左)と小原好美さん
「タコピーの原罪」に出演する上田麗奈さん(左)と小原好美さん

 集英社のマンガアプリ「少年ジャンプ+(プラス)」で連載されたタイザン5(ファイブ)先生のマンガが原作のアニメ「タコピーの原罪」が6月28日午前0時にNetflix、Amazon Prime Video、ABEMAほか動画配信サービスで配信を開始する。原作は、2021年12月~2022年3月に「少年ジャンプ+」で連載され、短期連載ながら同時期に連載していた作品の中で最高閲覧数を記録するなど人気を集めた。地球にやって来たハッピー星人・タコピーが、笑わない少女・久世しずかと出会い、彼女の笑顔を取り戻すため不思議な力を持つハッピー道具で奔走する……というストーリー。学校や家庭の抱える問題など小学生の無情な現実が描かれたことも話題になり、コミックスは全2巻ながら、累計発行部数が145万部を突破した。アニメは、しずか役の上田麗奈さん、しずかのクラスメートで明るく友達も多いが、しずかにだけは強く当たるまりな役の小原好美さんに“衝撃作”の収録の裏側を聞いた。

 ◇影の中に光が見える

 --“衝撃作”とも言われています。作品の印象は?

 上田さん タコピーという可愛い生き物が出てくることくらいしか知らなくて、オーディションを受けるにあたって、マネージャーさんから「元気な時に原作を読んでください。もしかしたら心が苦しくなってくるかもしれないので、覚悟して読んでください」と言われ、覚悟して読み始めました。覚悟していても一旦休憩挟もうかな……となるくらいショッキングな内容で、とんでもない作品に出会ってしまいました。ただ、すごく胸が苦しくなるような内容だからこそ、タコピーや子供たちが、どうやって生きていくのか、生きていけるのかを最後まで見届けなければならない、と次第に思わされ、休憩を一旦挟んだ序盤以降は、最後までノンストップで読み進めました。キャラクターの表情が左右で違って見えたりもしますし、セリフや行動からも、影の中に光が見える物語にも受け取れます。善悪、希望と絶望がグレーなところでつながっていたりしますが、救いが点在している印象もあって、そこが特に魅力的だと感じました。

 小原さん 私もオーディションのタイミングで原作を読みました。最初、ビジュアルを見た時、とにかくタコピーが可愛いので、ほっこりした話なのかな?と思ったのですが、PV(上巻発売記念PV)を拝見したところ、とんでもない!可愛いはどこへ?となる内容で、衝撃が走りました。これは原作を把握しておくべきだ!と思い、原作を読みました。事務所から「まりなちゃんを受けてください」と言われた時、個人的にこういった題材の作品にあまり出てきたことがないですし、これまでチャレンジしたけど受かったことのない系統の子だったので、多分ダメだろうなという気持ちもどこかにありました。自分にとってもチャレンジになりますし、決まったらいいなという気持ちと、決まったらどうしよう? という気持ちがあって、覚悟も生まれました。それだけ魅力が詰まった作品なんです。

 --生々しさもある作品です。キャラクターの印象は? 

 上田さん しずかは、生々しいからこその怖さみたいなものもあるキャラクターだと思います。タコピーのキャッチーさ、コミカルさ、可愛さ、明るさとは正反対のようなキャラクターですし、しずかやまりなちゃんたち人間側の生々しさが描かれています。しずかに関しては、「自分は孤独なんだ」と孤独がこびりついているイメージがあります。周囲の人からの無邪気、無意識、無関心なふるまいだったり、利己的な人の心ない言葉だったりに一つ一つに傷ついて、そんな自分を自分で守れないし、誰も守ってくれない。だからこそ、自分にとって都合のいい相手、悪い相手はいるのだろうけど、心から信頼できる相手がいない印象でした。人とのコミュニケーションでの成功体験が少なすぎるんだと思います。反対意見に対して過剰に反応してしまったり、敵味方の判断を急ぎがちという思考の癖があったりするのが、すごくリアルだなと思いました。そんな中で、タコピーたちとのいろいろなドラマが繰り広げられ、変化するのか、しないのかがすごく難しい。リアルに考えてもすごく難しいキャラクターです。

 --まりなも複雑なキャラクターです。

 小原さん まりなと向き合いながら原作を読むと、読み始めた時の印象と、後半の印象が変わると思います。彼女も環境によっては、もっと違ったのかもしれません。しずかもそうですけど、恵まれた環境、温かい環境で育っていたら、2人で手を取り合って、仲良くしていたかもしれない。環境によって、これだけ変わってしまうんだという生々しさを感じました。オーディションに受かった時、この子とどう向き合えばいいんだろう? どういうふうに演じればいいんだろう?という気持ちでしたが、いざ演じるにあたって、多分この子は頼りにできる存在がいなかったんだと考えるようになりました。私が彼女の中に入って、軸に入るのだから、想像の世界ではありますが、寄り添えるのは私しかいないんだ!と思っていました。衝撃的なこともあるのですが、それでも寄り添っていかないといけない。そうやって向き合っていきました。

 ◇鋭利な刃物を突きつけられるような

 --しずかを演じる中で意識したことは?

 上田さん 特報PVの収録のテストの際に「諦めを強く出したい」というディレクションをいただいて、本編でも「諦め」をベースにしていました。とはいえ、実は表情が豊かだったりもするんです。飼い犬のチャッピーといる時は笑顔になっていますし、自分にとっての救いや希望が見えた時は、喜怒哀楽がさらに見えやすくなります。反対意見を言われた時は、過剰に反応しちゃうところもそうですし、意外に喜怒哀楽はある子なのですが、無感情、無欲になりすぎないところを狙っていけるように頑張りました。あと、なるべく人の話を聞かない、相手の心の内を聞こうとしない。その感覚がそもそもない。人と話している時、噛み合っていなくて、ちょっとちぐはぐな感じがするので、その辺も意識しながら演じました。悪に見える瞬間もあったりするけど、彼女のその言動はなるべく衝動的でグレーなものにしたかったので、善悪をはっきりつけすぎないという意識を持ちながら、お芝居ができたらいいなと考えていました。

 --しずかの気持ちが分かるところもあった?

 上田さん 感覚が分かるところもあります。うまくいかなくて、コミュニケーションが成り立たないから、ずっと地面を掘り続けているような時期が、私にもあったので。全部が分かると言ったら少し乱暴ですけど、あの時の引き出しを引っ張り出していったので、光の方から闇を見ている感じにはならなかったのかもしれないですね。

 --まりなは?

 小原さん 先ほど「寄り添わなくては」とも言いましたが、実体験がないので、何もかも分からなくて……。家でいっぱい練習はしますが、感情をぶつけるシーンなんかは掛け合いの勢いで出たものが、生々しくなるんじゃないかな?と思っていました。ただ、一方で不安もありました。怒りの感情を露わにするシーンもありますし、そういうキャラクターに必要なのは、私よりも強い音を出せる人なのでは?と思っていました。私は声のキーが高い方ですし、彼女の声になれるのだろうか?という不安があったまま、現場に挑みました。でも、第1話の収録が終わった後、「なんで私になったんですか?」と飯野(慎也)監督、音響監督の明田川(仁)さんに質問したんです。普段はそんなことをしないんですけど。そしたら「アニメはデフォルメされた世界だから、こういう系統にはこういう声質の人みたいなものもあると思うけど、実際の世界はそうではない。そういう行動をしなさそうな声の人の方がリアルなんじゃないか」というお話があったと聞きました。それを聞いた時、自分の中の不安みたいなものがほぐれていって、それからはより挑戦できました。いろいろな人に助けていただき、ヒントをいただきながら演じることができました。

 --上田さんが、まりなの演技を聞いた印象は?

 上田さん アフレコ中は、しずかの視点だから、とにかく怖くて。鋭利な刃物を突きつけられ、逆らえないような印象がありました。怖がっていて、精いっぱいだったのですが、完成した映像を見ると、性悪ではなさそうで、しずかへの攻撃のし方に拙さがあるようにも感じました。やっていることはえげつないけど、楽しげな悪意みたいなものはないんですよね。

 小原さん まりなも余裕がないんですよね。

 上田さん だから、可愛く見えてしまうところもあって。原作を読んでいる時、アフレコしていた時、完成した映像を見た時で印象が全然違うんです。まりなちゃんもほかのキャラクターもキャスティングが強すぎます! 

 小原さん あの生々しい世界観の軸を中心にいたのは、やっぱり上田さんが演じるしずかなんです。だから、この世界観が出来ているんです。しずかが上田さんじゃなかったら、多分作風が大分変わっちゃったと思うんですよ。生々しいと何度も言っていますが、リアルに聞こえる彼女が中心にいたから、私もまりなでいられました。この子をちょっと攻撃したい、挑みたいという気持ちでいられましたし、バランスがよかったんだと思います。完成した映像を見て、まりなは人を攻撃することに慣れてないけど、強くいこうとする感じがして、うまく噛み合ったように自分では思えました。第1話はまだ助走に過ぎないので、この後どんどんむき出しになっていきます。こんなことはなかなか言わないけど、むしろ嫌いになっていただけたらうれしいですね。

 ◇収録はほっこり

 --衝撃作です。演じる中で心が引きずられるようなところもあった?

 上田さん それが全然なかったんです。原作を読んでいる時はあったのですが。お芝居をするとなったら、しずかモードになるので、チャッピー以外のことは何も気にならないですし。ほかのキャラクターとの掛け合いで考えることもいっぱいあったので、引っ張られている暇がなかったのかな? あとは、届けなきゃ!という気持ちが強くありました。みんなで力を合わせて、この作品の魅力をちゃんと伝えなきゃ!という前向きな気持ちの方が強かったから、闇にとらわれることがなかったのかもしれないです。

 小原さん この現場には本当に感謝しています。心を持っていかれる役ですが、にぎやかな現場だったんです。休憩中は温かく、ほっこりする雰囲気で、収録になると、すぐに切り替えて挑めるメンバーだったので、本当に助けられました。

 上田さん タコピー役の間宮くるみさんがすごく優しいですしね。

 小原さん 間宮さんは、私たちのことを「すごい!」と言ってくださるのですが、本当にすごいのは間宮さんです! みんなでお菓子を食べたり、ほっこりしていました。

 --映像を見て感じたことは?

 上田さん 光と影の描き方が素晴らしくて。物理的な日の光と影もそうですし、キレイなところをすごくキレイに描き、汚いところをすごく汚く描いていて、それに意味があるんです。だから、しずかたちの気持ちや状況がすごく分かりやすくて、より重く苦しく受け止めてしまうシーンが多い印象です。タコピーと人間側の質感の違い、見ている世界の違いのちぐはぐさもしっかり伝わりますし、完成度が高すぎて、興奮と感謝の気持ちがすごくありました。

 小原さん タコピーの感覚、人間側の感覚が噛み合っているようで噛み合っていないように見えるのに、それが成立しているのが不思議です。そこがこの作品の魅力なんだと改めて気付かされて、どんどん引きずり込まれていきました。違和感を感じてください!

提供元:MANTANWEB

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