櫻井孝宏:「呪術廻戦」ずっと演じたかった高専時代の夏油傑 “親友”五条悟と響き合うように
配信日:2025/05/18 7:31

「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載された芥見下々(あくたみ・げげ)さんの人気マンガが原作のテレビアニメ「呪術廻戦」の第2期「懐玉・玉折」の総集編となる「劇場版総集編 呪術廻戦 懐玉・玉折」が5月30日に公開される。「懐玉・玉折」は、2023年7月から放送された全5話のエピソードで、“最強の2人”五条悟と夏油傑の呪術高専時代の“もう戻れない青い春”が描かれた。夏油傑役の櫻井孝宏さんは「懐玉・玉折」で描かれる高専時代の夏油を「ずっと演じたかった」と語る。収録の裏側、“最強の2人”への思いを聞いた。
◇「懐玉・玉折」をやらないと夏油になれない
「呪術廻戦」は、虎杖悠仁が主人公のテレビアニメ第1期が2020年10月~2021年3月に放送され、第1期の前日譚(たん)で、乙骨憂太が主人公の「劇場版 呪術廻戦 0」が2021年12月に公開された。続いて、2023年7~12月に放送されたテレビアニメ第2期は、五条や夏油らの呪術高専時代のエピソード「懐玉・玉折」と、10月31日のハロウィーンでにぎわう渋谷の街で起こる「渋谷事変」で構成された。
「懐玉・玉折」で五条と決別した夏油は最悪の呪詛師となり、「劇場版 呪術廻戦 0」で大規模呪術テロ・百鬼夜行を引き起こし、五条の手で命を絶たれる。そして、第2期の「渋谷事変」では、死んだはずの“夏油傑の裡(うち)にいる何者か”の正体が明らかになった。櫻井さんは、第1期、「劇場版 呪術廻戦 0」、第2期でさまざまな“夏油傑”を演じることになった。難しい役にどのようにアプローチをしたのだろうか。
「第1期が大変で……。アフレコの演出も難しくて、ちょっと曖昧というか、正体をつかませないような感じでの登場だったので結構大変でした。その後の『0』は、映画として作られたので、やはり映画ならではのテンション、スケール、パワーがあって、それはそれで楽しかったです。それからの『懐玉・玉折』だったのですが、私はここが一番やりたくて。ここをやらないと、やっぱり夏油になれないというか。それまでのつま先立ちみたいな状態からやっとかかとを下ろせるような、そういう気分になれたのが『懐玉・玉折』でした」
高専時代の夏油を演じる上では、「10代ならでは」の部分を大切にしたという。
「学生時代の彼らに混じり気なくシンプルにアプローチして、これまでの第1期、『0』から引き算するような。かつプラスアルファで、まだ一人で立っていない感じというか、学生時代の群像劇のニュアンスを形作れたらなと思ってやっていました。だから、夏油だけを切り取っている部分もありますが、五条とのニコイチとか、(家入)硝子がいたり、先生がいたりという構造の面白さもうまく表現できたらなと思ってやっていました」
中村悠一さん演じる五条悟を「多分に引用した」とも語る。
「五条と共鳴するような感じで、五条のあのトーンをちょっと盗むというか。彼らは我々とは全く違う青春なので、100%理解はできないと思うのですが、それでも10代のあの頃の自分を探しながら、いろいろな人と触れ合いながら……という人間らしい、学生らしい像をしっかり作っておきたいなと思っていました。中でも、五条悟の存在は夏油傑にとってみれば、親友ですしね。だから、アフレコでも五条の表現に乗っかるというか。響き合っているように見てもらいたいなという思いで臨んだところはあります」
◇五条と夏油の青い春 切なく苦しい、それでも大事な時間
「懐玉・玉折」の中でも、櫻井さんは第1話が「一番キラキラとしていて楽しかったです」と語る。第1話では、若々しい学生ノリの五条や夏油、硝子が描かれた。
「“帳(とばり)”を忘れちゃうみたいなつたなさ、未熟なところといった学生ノリは冒頭できれいに見せてくれるので、やっていてもやっぱり楽しかったんです。それまで、ちょっと悶々(もんもん)としていたところもあったので。夏油は、すごく複雑な面白いキャラクターだから、当然やりがいもありますし、すごくいい役をいただいたと思うのですが、本当に早く『懐玉・玉折』を触りたいなと思っていたので、やっぱり楽しんじゃいましたね。五条と夏油がバスケをやりながら議論して一触即発みたいな感じとか、夏油が五条に“一人称『俺』は止めた方がいい”と言ったりとか、ああいう彼らの日常会話が楽しくて。危なっかしい五条と、割と常識的な夏油という、凸と凹がうまく噛み合っていたところあったんじゃないかと」
2人の関係性について、演じることで改めて気付いたこともあったという。
「夏油の目線で行くと、やはり五条に感化されているようなところもあるのではないかと。それは逆も然りですけど。話のトーンを合わせるというか、『私達は最強なんだ』という言葉も、元々の出所は『五条っぽいな』とか自分の中の気付きみたいなものもありました。自己解釈ではありますけど。何かを決めて表現したというより、五条が何かを言って夏油がそれに返す、という。五条の縛られていない発言や考え方をまぶしく見ているところもあったんじゃないかなと思います。五条の言動は極端ですけど、真理、確信はついている。意味や意義を大事にする夏油と、もっと本能的な五条という中身の違いがあるからこそうまく噛み合って、また、違うからこそ最終的に離れていく。それがまた、収録をしながら味わい深かったです」
劇場版総集編では、キラキラとした五条、夏油達の日常から決別までが一気に描かれる。
「ひとくくりになっているからこその気づきもありますし、より正確につかまえることができると言いましょうか。やはりこのエピソードはすごく切なくて、苦しくて、どうしても彼らを切なく見てしまうのですが、それでも大事な時間ですし。私もこれまで収録してきた中でも一番繊細に意識して臨んだのが『懐玉・玉折』だったので、ぜひとも多くの方に、劇場の大きなスクリーンと音響環境の中で見てもらえたらなと思います」
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