同窓会で初恋相手と再会!『セフレの品格(プライド)』あらすじ&登場人物紹介
更新日:2017/03/01 10:00
同窓会で初恋の人と再会したら、どうしますか? 今幸せな人にとっては、初恋なんてもう過去のことかもしれない。でも、今の生活に満足していなかったら? そして初恋相手と息が合ってしまったら……?「セフレの品格」 (湊よりこ/双葉社) は、そんな大人の男女の恋愛や欲求、常識やしがらみを描いた作品だ。
同窓会で初恋の人と再会し、一夜をともに。でも男は――!?
主人公・森村抄子(もりむら しょうこ)は、子持ちでバツ2。久々に顔を出した同窓会には、大切な友人・新堂華江(しんどう はなえ)、そして初恋の相手・北田一樹(きただ かずき)もきていた。しかし楽しい気分になれたのも束の間、離婚の話が広まってしまい、浮いてしまった抄子。
居づらくなって帰ろうとした彼女に、一樹は「ならオレも抄子につき合うよ」「ホテルに行こう…」と声をかけてきた。
二度の離婚のあと4年も独り身だった彼女は、初恋相手の一樹の誘いに乗り、そのままホテルで一夜を共にしてしまう。
彼との行為は刺激的で、気持ちよくて、まるで天国にいるかのよう。今回は勢いでこうなってしまったが、これからもっとお互いのことを知っていきたい…。抄子はそう思い、食事に誘ったのだが、一樹から返ってきたのは、「デートなんかしないよ」「割りきって身体だけの関係を楽しまないか?」という冷めた言葉だった。
抄子は、結婚願望はもうなかったが、愛情のない関係も求めていない。セフレなんて許せない、と、彼とは縁を切るつもりだった。でも、彼との行為が忘れられず、思い出しては身体がほてってしまう自分がいた――。ここから、彼女のセフレ生活が始まっていく。
「セフレ」という関係は、ありか、なしか。そしてその先は――?
一樹には、たくさんのセフレがいる。そして、抄子の友達・華江とも身体だけの関係を続けているのだ。なぜわざわざセフレという関係を築くのか? それには理由があったのだ。
実は華江は、5年前に乳がんを患い、乳房を両方とも全摘している。彼女は結婚している旦那との関係も良好だが、摘出手術以降、身体の関係がなくなってしまったのだ。そのため、華江はその寂しさを埋めようと複数の別な男と交わっている。産婦人科の医者として術後のケアをしてくれている一樹も、その1人なのだ。
そんな2人の事情を知った抄子は、ただただ汚らわしいものだと思っていた「セフレ」にもそれぞれの形があり、それが誰かを助けることもあると知る。そして華江と一樹の関係の裏側を知ったことで、一樹への気持ちが再燃し、気づけば抄子も一樹のセフレの1人になっていたのだ。
最初はセフレという関係に心がついていかず、苦脳していた抄子。しかし次第にその割り切った関係にも慣れ、感情を自制できるようになり、そして刺激を求めるようになる。そして、心までは渡さないのがセフレとしてのプライドなのだと、そう思うようになっていく。
だが今度は、一樹が抄子に魅かれ始めるように。それぞれの思いがうまくかみ合わず、すれ違いを繰り返して――。
寂しさを埋める手段としての「セフレ」
実は、一樹がセフレを作って遊ぶようになったのにも理由がある。一樹は以前、ナースだった多恵(たえ)という女性と結婚しており、最愛の息子もいた。当時の一樹は遊ぶこともせず真面目に働き、自分の築いた家庭は愛のあふれる幸せなものだと思っていた。
しかし最愛の息子は、実は多恵と一樹の父親との間にできた子どもだったのだ! 彼女は、一樹の父親の元愛人だった。彼に振り向いてもらえなかった多恵は、一樹と結婚することで北田家に入り込み、父親を脅迫して関係を続けていたのだ。
そのことが北田家に発覚し、多恵は息子を連れて出て行く。それから一樹は女性を信用できなくなり、本命は作らずに、たくさんの女と遊ぶことで気を紛らわしていたのだ。
また、抄子にも辛い過去がある。彼女が初めて結婚した男・浩(こう)は、結婚するまでは優しい男だった。しかし結婚した途端、モラルハラスメントを日常的に行なう攻撃的な男へと豹変したのだ。
浩の暴言に心を病んでしまった抄子は、ある日それがモラハラだったということを知り、意を決して離婚する。その経験から、抄子は結婚というものに前向きになれなくなり、結果としてセフレという道を選んでしまったのだ。抄子や一樹、そして華江のセフレ生活は、多くの人を巻き込み、時に人を傷つけ、時に癒しながらこじれていく。
ある日、一樹の病院に中絶治療を受けにきた女子高生・山田咲(やまだ さき)。彼女は両親から性的虐待を受け、実家から逃れるために援助交際をして寝る場所を確保していた。
そんな咲を見過ごせなかった一樹は、彼女を保護し、しばらく同じマンションで暮らすことに。
咲は、最初は一樹を試すような行為を繰り返すものの、次第に彼の温かさに魅かれていくように。しかし一樹が抄子を思っていると知った彼女は、嫉妬のあまり抄子の乳液にカビ取り剤を混入するという暴挙に出る。
しかし、その乳液を間違って使ってしまったのは、抄子の娘・森村遙(もりむら はるか)だった。遙は悲鳴をあげ、彼女の顔は真っ赤にただれてしまう。
幸い、傷も浅く失明することもなかったが、咲はこれで終わらせる気はなかった。知人に抄子を傷つけてボロボロにするよう頼んでいるところを目撃してしまった一樹は、その犯人が咲だと知り、抄子を守るために抄子と会うのをやめ、咲と養子縁組をする決意をする。
そして父親として咲に愛情を注ぎ、彼女を改心させていくのだ。
そんな中で、一樹を失ってしまった穴を埋めるため、抄子は別のセフレを作るようになる。
真っ直ぐに抄子のことを思う14歳年下の会社の清掃スタッフ・市原猛(いちはら たけし)。「セフレって嫌…?」と誘惑し、彼の純粋な好意を利用してセフレにしてしまった。
このあとも、一樹と抄子はお互いに思い合っているのに、近づきかけてはかみ合わず、すれ違う。そのあまりに残酷な負の連鎖は、見ているこちらの胸が締め付けられるほど。
そんな中、抄子は一樹との子どもを妊娠したことが発覚。しかしそこでも 様々な“負の連鎖”のせいで、抄子は悩んだ末に中絶してしまう。
その中絶を知った一樹は、抄子を許すことができずにひっ叩き、別れを告げてしまう。2人の関係の溝は深まるばかりで、いよいよ修復不可能かと思えた。しかし1人の女性が、2人の関係を修復させていく。
一樹がフランスで出会ったフィフィというその女性は、1人の女性を思い続けているレズビアン。彼女が愛している女性は10年前に事故で亡くなっているが、未だ忘れられず、死にたいと思いながら生き続けている女性だった。フィフィは、一樹の寝言で未だ抄子を思っていることを知り、「大人なら逃げずに向き合いなさい」と彼の背中を押す。
フィフィの計らいで、一樹と抄子は互いに全てを打ち明け、ようやく溝を埋めることができた。2人の関係は安定し、幸せな毎日を送っていたと見えていたが――!?
本編につながる「セフレの品格 Age21」 (湊よりこ/双葉社) も公開されている本作。最終話には、一体どんな結末が待ち構えているのだろうか――。ぜひ見届けて欲しい。
「セフレ」という関係に、遊び人の愚かな行為だという印象を持っている人は、本作を読んだら深く考えさせられるだろう。人は、依存先を増やすことで自立するという。それならば、合意の上での関係は、必ずしも悪ではないのかもしれない――そんな思いを抱かせてくれる作品だ。