みんなのレビューと感想「残酷な神が支配する」（ネタバレ非表示）

萩尾望都の名作

重厚で緊張感があふれる世界観のなかで、登場人物たちの葛藤や心理描写が丁寧に描かれていて、読み応えがあります。残酷さと切なさが混じった物語に自然と引き込まれました。

NOと言えないからってYESじゃない

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ようやくラストまでたどり着いた。最初の方のジェルミ、多分正論でよく言われるのが、ノーと言えなかったの？誰かに相談できなかったの？ってこと。
でもですね、それができないんです！
そしてその後、グレッグの死後、記憶に引きずり込まれるジェルミ。さらに真摯に寄り添うイアンの苦しみ。
ネタバレですが、ラスト、イアンは大学合格、ジェルミは美術の勉強へ。
カタルシスのない終わり方という意見もあるかも。けれどこれはこれでリアル。

禁忌とされた問題を刳る作品です。

＝男が男にそんな事ありえるか！＝少年に対する性的な虐待の事実は、この世の大半である異性愛の男性は、本能的に生理的な嫌悪感を呼び起こすので、長年この事実は世界中どこにいってもタブーとされ封殺されてきた問題なんです。あるのに存在しないとされ法的に訴えようにも加害者を裁く法が無いゆえに、長年放置されてきた重大な人権侵害を陽にさらけだす作品でもあります。理不尽な内容ゆえに、明るく軽いノリの少女マンガや、軽快で面白い青少年漫画の世界しか知らない人には、過激な描写が目に毒かも知れません。けれど現実問題として放置してはいけない事実なのです。人知れず苦しむ人がいる事実を、漫画という大衆的なメディアを通して、幅広く警告を込めて救いのメッセージを発信したのが、この名作マンガだと思います。ぜひ一読してください。