狂気の説得力、性急な展開
養護施設から裕福な家庭に引き取られた二人の少女をめぐるストーリー。
ホラー映画のパターン的には、こういう話はだいたい「家にやって来る側」が恐怖の存在であることが多い。
この漫画で言えば、少女が狂っているとか呪われているとかで、引き取った家の人々を恐怖に陥れる、と。
しかし、この漫画は逆で、少女たちを引き取った夫婦の側がいかれている。
その点は新鮮に感じられたが、どうにも気になることが、二つ。
まず、夫婦の狂気にリアリティーを感じない。
この夫婦の狂気は、簡単に言うと、養護施設から子どもを引き取り、幸福を味わわせた後で、「商売に失敗してやっぱり育てられない」と突っ放すときの、相手の絶望感がたまらないぜ、というものだ。
私は、これに冷めてしまった。
そんな狂気、あるかいな、と思ってしまったからだ。
もちろん、狂気だから、私のような一般ピーポーの理解を超えているのは当然なのだが、作品の中で狂気を描く場合、「理解できないし、意味不明だし、あり得ないけど、あるかも」と思わせるような、一種のバランス感覚が大切であるように思う。
本作の狂気は、その「あるかも」からあまりに逸脱しているように感じた。
もうひとつは、展開がはやすぎること。
二人の少女が裕福で親切そうな夫婦に引き取られ、二人が互いに仲良くなり、閉ざしていた心を開き、家族としてもいい感じになるが、夫婦が「仕事が破綻したから二人のうちどちらかは施設に戻さないと」と話しているのを聞いてしまい(これは二人の仲を裂くための夫婦の芝居で、実際には二人とも施設に送り返す気でいる)、二人は自分の方が残りたいという思いから仲違いするものの、今度は夫婦の真の目的を知り、再び団結して、何と夫婦を殺そうと決意する。
ここまで、わずか「6話」である。
はやくない?
やたら引っ張れとは言わないが、もう少しじっくり丁寧にやってくれよ、という思いは拭えなかった。
- 10
3.0