4.0
シンプルな良作
絵は見ての通り、特別画力があるわけでも、構図が凝っているわけでもありません。ただ、変な回り道のない真っ直ぐなストーリーと、それを上手く切り取った場面で展開されていきます。
韓国の漫画だそうですが、別にそこまでのお国柄な違いは気になりませんでした。
私なんかはてっきり日本が舞台だと思っていたほどです。言われてから確かに日本人のすることにしては熱烈でロマンチックなところがあるなと気が付きました。
主人公、一之瀬千鶴は仕事ができるし真摯であるものの、どこか不器用で美人でも愛嬌がある訳でもない女性です。作中でも誠実な人ととるか可愛げが無い人ととるかで評価が割れています。
ただ冷静で真っ直ぐに人や状況に向き合い物事を荒立てないように振る舞う、周りのことを考えられる人です。
元恋人、堂島優に分かりやすく甘えたりしないものの静かにひたすらに愛し続け、そして11年の月日で感じなくなったときめきを求めた優に浮気されて彼に別れを告げます。
傷心を仕事で吹っ切ろうとしたところで仕事人間の課長、荻野信二との関わりが増えてきて…この課長、意外と一人一人をしっかり見てくれる人で、元彼すら気がついてくれなかった主人公の髪型の変化に初めて触れてくれた人です。オフの時に優と別れたと聞いてから気丈に振る舞う主人公を気にかけ実は臆病な一面があると知り、そのうち恋心を抱くように。偶然を装って待ち伏せしたり不器用にデートに誘ったり、その姿はなかなか可愛らしいです。ストーカーぽくないのはその後の態度が初々しいからでしょう。
一方優は浮気相手の綾瀬結衣と上手くいかなくなっていきます。
結衣は若くて可愛いものの、彼女の前で大人ぶるにも経済的に限界が来ていました。しかも、ストレートに甘える結衣は欲しいものを遠慮なくおねだりするし、わがままもしょっちゅう。
優は千鶴と比較し続け、未練から付き纏い行為をするように…
そう、この話は長年付き合った恋人と別れて課長と互いを思いやりながら愛を育む千鶴達と、浮気心から結衣と互いに不誠実な気持ちで恋しようとする優達の比較になっているのです。恋愛と言う言葉の、恋と愛は似てるようで異なる感情(よく“愛は真心、恋は下心”と言いますよね)だと教えてくれる話でした。
タイトルも伏線です。作品を総合的に見てお勧めできる良作だと思います。
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11年後、私たちは