5.0
名作
本編全話読了済み。(外伝は途中まで)
まず、昨今流行りの冗長なタイトルではなく簡潔で分かりやすいタイトルが好印象。
そして、登場人物の心理描写が巧み。
主人公ビアンカは前世(あるいは"夢で見た最悪な未来")の記憶を持ってはいるが、だからといっていきなり善人化する訳ではなく、様々な経験を経て、少しずつ成長していく。
そして、ビアンカのほんの些細な変化の積み重ねが周囲の人々に好影響を与え、劇的な変化を齎していくという過程の描き方がお見事。
また、時代考証がきちんとしており、キャラ設定が作り込まれているので展開に破綻がないのが良かった。
メインキャラだけでなくサブキャラや悪役も非常に魅力的に描かれている為、単純な勧善懲悪モノとは一線を画する仕上がりになっている。
個人的にはジャコブの最期の台詞がとても印象深い。
さて、中世封建社会の貴婦人であるビアンカが最悪な未来を回避する為にまず子作りを選択したところや、無礼な下女に鞭打ちするくだりが批判的に語られているようだが、これらの行動は時代背景を鑑みれば当然の事であり、彼女が非難される謂れはない。
本作の舞台は「寛大さをもって全てを許してあげる優等生ヒロイン」や、「ご都合主義的に成り上がっていく悪女ヒロイン」「政治より何より恋愛第一なヒーロー」等が活躍するファンタジー中世ヨーロッパではないのだから、"リアリティがあろうがこういうキャラ設定やストーリー展開は好きではない"なら分かるが、"回避の為の方法が子作り?"や"ビアンカの仕打ちは苛烈過ぎる"という批判は的外れだと感じる。(結局、この時の下女は追放後にも問題を起こすので、もっと徹底的に教育した方が良かったくらいだと思う)
長々と書き連ねたが、ビアンカの成長、ビアンカが回帰した理由、ビアンカとザカリー、イボンヌとガスパルの恋愛模様、その他のキャラたちの行方等、見どころ満載の作品なので序盤だけで判断せずに読み進めてみてほしい。
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結婚商売