5.0
心の世界を広げる名作!
一気読み!
森に放置された特別なピアノに選ばれた少年と、恵まれた環境に生まれたサラブレッドの、成長物語。そして、ラストの感動の奇跡…。
前半は小学5年生で、8巻以降は高校2年生。
ここで描かれる成長は、努力の積み重ねで研鑽された技術的なうまさだけでなく、さらにその上、あるいはベースにある、登場人物たちの音楽との向き合い方、生き方の姿勢、あり方の進化や深み。
それが、堅苦しくない、とても柔らかで優しい、自然体な感性で描かれている。
何年も野ざらしのピアノが、たった1人だけ、美しい音色を出せることからファンタジーだけど、そんなフィクションも作品の世界観に気にならなくなる。それほど、途中の、そして読み終えたあとの、幸せな感動で満たされる感覚は格別です。
複雑で厄介な人の心や、貧しさや死ぬほどの苦しい境遇の、すぐかたわらに、人の作為を超えた、自然の神秘や音楽芸術の美しさが息づく。
そんな至高の音楽とのやりとり、多様な人とのかかわりが、主人公たちの成長に絡ませ、愛情とともにさり気なく丁寧に描かれている。
どんな過去も、どんな痛みも乗り越えられる。そんな力強い、大きな優しさに包まれた作品。
読み返すと、色んな伏線にも気づかされる。そして、ショパンをすっごく聴きたくなる。それも、単なる音の先にある、リアルな何かに耳をすませ、体験したくなる、素晴らしい作品。オススメです!
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ピアノの森