5.0
バディ物コメディ領地開拓アクションの傑作
第一話の冒頭を読んだ時点では「あ~はいはいいつもの憑依転生ね」というイメージを受けるだろう。しかし、そこで読むのをやめてしまうのは、あまりにも早計。人生の損失とさえ言える。タイトルに列記したジャンルの中で一つでも気になるポイントがあるなら是非読み進めてほしい。絶対に後悔しません。
読んでいた小説の中のモブに憑依してしまった…という導入こそよく見るものではあるものの、人物造形とストーリー展開の巧みさと、完璧な魅せ方によって、凡百の作品群とは一線を画す出色の出来となっている。
中でもこの作品を優れたものにしているのは、主人公・ロイドというキャラクター及び、その護衛騎士・ハビエルとの関係。
転生前は真面目な学生だった主人公(その理由も後々明かされる)だが、ボンクラ息子・ロイドに憑依して以降、とんでもなくやばい人物に豹変する。
とにかく金にがめつく、目的の為なら手段を選ばず、必要とあらば暴力も脅迫も躊躇しない。しかしそんな行動が、彼と出会ったありとあらゆる人々をもれなく幸福に導いていく。
そんな彼の相棒役を務めるのが、本来の小説の主人公である騎士ハビエル。
最初のうちはロイドの振り切った行動の数々に呆れたり引いたり嫌悪を抱いたりしているのだが、努力家で機知に富み、勤勉で責任感の強いロイドの本質に触れるうち、どうしようもなく彼に惹かれていく。その様の描き方も見事。
好感度マイナスからスタートしたハビエルが、最終的にどれほど変わったのか、その結末を見届けた時にはきっと言葉を失うはず。
彼らにはそれぞれ思いを寄せるヒロイン達もいるにはいるが、正直そちらはオマケのようなもの。
始めは反りが合わなかった二人が、徐々に互いに信頼を寄せ、悪友のような関係になり、やがて唯一無二の相棒となっていく過程に尊みを感じる人は、是非読んでほしい。
笑いも涙もてんこ盛りの大傑作。
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