4.0
全話を読み、面白かったがモヤモヤもする
とても面白く読んだけど、一読では終盤の展開にモヤモヤしたのもあり、己の評価を整理するために書きます。
よく見かける現代からの憑依転生かと思っていたら違いました。憑依転生は元の人格が消し飛んでしまい、その人物のそれまでの人生や家族との関わりを(悪役が多いとはいえ)奪う行為をスルーしていることが気になりますが、この作品はそこがトリックでもあり上手く処理されています。いわゆるマルチバースのような前世の記憶を主人公であるディランは小説として読んだ認識になっていたのだと解釈しました。
なぜ小説で悪役であった人物が、記憶を取り戻す前から善人として生きていたのか(死を喜んだ妹を慈しんでいたのか)などの随所にある違和感もトリックによりきっちり解決します。
ただ、この設定によって、悪女ポジションな人物の改心による逆転劇として終盤前までのストーリーを楽しんでいた場合には肩透かしを食らうことになります。結局は前世と同じ運命ってことかというがっかり感です。アデラインに対して思い入れのない私は運命への気持ちの切り替えが上手くできませんでした。
起承(悪役のルート改変と思って読んでいる)までのエピソードが厚くかつ痛快で、転結(もしかして主人公は?と思いつつ読んでいる)が駆け足気味で主人公のパワーや魅力が薄れ気味なことが気持ちの切り替えの追いつかなさに拍車をかけます。終盤でディランとセドリックのイチャイチャや魅力的なサブキャラの活躍を交えて、前世と同様にモーガン絡みとかでもう一波乱あって、その中でトリックがゆっくり判明して欲しかったのかもしれません。セドリックが常備しているという銃に、前世と同じように活躍して欲しかったです。何度も描写されていたので期待しちゃっていました。
原作がどうなのかは知りませんが、終盤でドラマチックさが薄れたのは、荒事の起きない理想ルートでやり直す設定のよくある弊害かもしれません。
作中の問題解決が主人公たちの能力や機転による展開なのが良く、会話の内容やテンポも良かったため、終盤で上手く主人公の設定を飲み込めれば評価が星5だったと思います。
伏線や仕掛けなどが随所にあり、よくできた話だと思いますし、終盤あたりまでのディランとセドリックのやりとり(これも今考えると前世のリフレインとして描かれているかも)が好きなので、無料と購入分を合わせた二周目の通読で整理したいと思います。
-
0
脇役の私が妻になりました