5.0
心の中の累
尋常ではないほどに醜い容姿、トップレベルの演劇の才能、他人と入れ替わる不思議な口紅…。
非日常的すぎる設定を持つ主人公ですが、感情移入しながら読み進めることができます。
作品の魅力としては、綺麗でどこか妖艶さも感じられる絵や、ハラハラドキドキ、緊張感のある巧みな心理描写があげられますが、そればかりではありません。
他人の美しさを羨むと同時に呪う気持ちというのは、多かれ少なかれ誰にもあるのではないでしょうか。
そしてそれに気付いたとしても、汚い感情であるとして封印してしまう。
累はその気持ちを表現し、願望を叶えていく。
しかし、「姿は醜いが心は清らか」などというきれいごとでは収まらず、共感しがたい部分も持ち合わせる。
それも社会での居場所を確立する手段として必用なものでした。
残酷なことに、社会では美しさは力や守りになりうるものです(美しさの持つ弱さにも触れられますが)。
美しさをめぐる様々な感情。
自分は累とは違うと思いながらもどこかで同一視しながら読んでいるのかもしれません。
自分の存在価値は?理由は?
そこに美しさはどのように絡んでくる?
いろいろなことを考えさせられます。
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累