5.0
全ての根源を知るほどに面白くなる
一応ホラーの分類なのでしょうが、読み進めるほどミステリーの要素が大きくてすごく興味深い。
カノコの兄は病魔に侵され、恋人の男性である聖さんと最期まで一緒にいる事を望み、入院せずに二人で暮らしていた。
兄が亡くなった後、聖さんに恋心を抱いていたカノコは、変わり果てた怪物の様な姿になった兄だったものが聖に纏わりつくのが視える様になる。
それは、愛する恋人である聖を妹に取られるのを牽制してくる様になるが…。
実際、視えるのはカノコだけでなく聖の元カレ、亡くなった兄の元カノや、いわゆる視える人である元カノの知り合いなども同様だった。
今でも兄を想う聖さん、亡くなって恐ろしい姿になっても聖を守ろうとするカノコの兄、そして聖に恋をするカノコ。
さらに今でも聖を愛する聖の元カレ。
純愛かと思えば、登場人物の殆どが闇を抱えて根本的に全てが間違っている事が徐々に明らかになる。
多分、一番壊れていて自分に好意を寄せる相手をも破壊するのが魔性の魅力を持つ聖。
聖の歪んだ性癖、カノコの嘘、読み進めるほど一転二転として面白い。
聖に取り憑く兄だったものが、まともなものに思えてくる不思議さ。
色々と闇が深過ぎて、誰か一人でも幸せになるんだろうかとさえ思えてくる。
結末がすこく気になります。
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兄だったモノ