4.0
リアル中のリアル
私は刺繍作家。
今、これと同じ世界に踏み込もうとしている刺繍作家。
だけど、私の刺繍作品はほとんどが非売品。
所有権は私の娘にある。
完成の直前で娘に所有権を譲渡している。
譲渡した所有権により、娘は私の刺繍作品を販売することを拒む。
だけど、展覧会には出した。
コンテストにも出した。
小さな賞をいただいて、今、次の賞も確定している。
買いたい側の心理はわかる。
売りたくない側の心理もわかる。
私の作品は1日10〜12時間かけて、8ヶ月半かかったものがある。
毎日湿布貼って、高級目薬さして、腱鞘炎と肩こりと運動不足に悩まされても作り続けた作品。
現在、最低価格が一千万円。最高額が二千万円。
賞を取ればそれ以上に跳ね上がる。
これはそういう世界。
そして、コンテストで簡単に賞は取れない。
だが、飾られればそれで良い。本に写真が載ればそれで良い。
私は自腹切って掲載契約金を払う。
安くない。
私は自分のお金のために作品は作らない。
自力で生きていくことが難しいほど身体の弱い娘が、私の死後に金銭的に困らないようにするために作品を作っている。
そして、そのための価値を上げてる。
彼らの思う「販売」とは違うけど、若い頃ほ「絵」を描いていた。
「売ろう」と思っていた。
それで財産を作ろうと思っていた。
だけど、私はキャンバスから離れた。
何万人もいるライバルの中から抜け出せなかったから。
売り方を知らなかったから。
私は高卒のしがない主婦で、病弱な娘を支えるために外仕事にはでられない。
家で出来る仕事を探して「刺繍」に辿り着いた。
だから、所有権は娘にある。
誰にも真似出来ない、機械にもできない領域を目指してる。
絵を描いている諸君。
まずは「価値」を作れ。
銀座の画廊で数十万円で売られているものと、君たちが描いたものの間に差は無い。
良い額縁にに入れろ。
気に入る額縁が無いなら、自分で作れ。
額縁も君の作品だ。
私は枠まで刺繍する。
私のこだわりだ。
それが私の作品。
あなたは枠の縁までが自分の作品だと思っているのか?
「売れる作品」とは、「型にハマらない作品」
売り込む時は金を惜しむな。あとで数百倍になって返ってくる。
作りたいものを作れ!価値を高くしろ!
芸術は「枠を超えた空間」に存在するのだから。
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いつか死ぬなら絵を売ってから