5.0
酒井かをり先生の絵柄に惹かれて読み始めました。
やわらかくて、きらきらしていて、時にもどかしさもあるけれど、絶対に裏切らないでいてくれる、そんな物語です。
しばらくブランクがあった後に一気読みしたのですが、ひとつひとつの出来事が丁寧に進められていくので、毎回の連載を追っていたらもどかしくて堪らなかったかもしれません。順調に進むようで、簡単にはいかないからほろ苦い。主人公の陽奈ちゃんが、優しくて慎重で純粋な性格だからこそのテンポだと思います。
ハラハラするような展開や意地悪なキャラは出てこないので、嫌な気持ちになることなく、安心して読むことができます。疲れていても読めば夢が膨らむような作品が好きなので、主要キャラが不幸にならないところもすごく好きです。
初見の方には、序盤の体育祭が終わるまで読んでみるといいかもしれません。体育祭の後半で、新くんが初めて見せてくれる表情が出てきます。それが決め手となって、一気に最後まで読み進めてしまいました。無料公開がその直前までなこともあるので、新くんのあの表情を他の人にも見てほしい自分としては、ちょっと悔しく思うことさえありました。
黒髪ストレートの男の子が好きなので、新くん目当てで読んだのが始まりですが、どのキャラも笑顔がとにかく眩しくて大好きです。作品の中で、誰かの笑顔を見て誰かがときめくシーンも納得です。
わたしは最終的に、莉子ちゃんがいちばん好きなキャラになったのですが、莉子ちゃんの清々しさや強さがこの物語の大きなスパイスだと思います。琥太郎くんは、絶対に幸せになってくれと強く願う愛されキャラです。琥太郎くんが笑う度に切なくなった展開もありました。
このきらきらした物語を漫画として描かれたのが酒井先生で良かったなと思っています。ビー玉のようなきらきらした瞳の可愛い女の子や、爽やかなイケメンの男の子、莉子ちゃんを初めて理解してくれたかっこいい先生の描き方。少女漫画に在ってほしい要素がたくさん詰まった絵柄で、とても満たされました。こんな学生時代だったら良かったなという憧れの世界が、酒井先生の漫画で華やぎリアルに感じられました。
Web連載だからとゆっくり堪能した結果、完結から少し時間が経ってしまいましたが、紙の本で手元に残したいです。両先生の次回作を楽しみにしています。
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ビターシュガー