5.0
賛否両論の結末だが…
個人的にはこれで良かった。安易にハッピーエンドにしたらメッセージの重みが半減する。相互理解の努力を怠った結果は誰も望まない、幸せになれない残酷なものとなる。精神的余裕の無さや人生経験の未熟さと言う誰にでも起こりうる瑕疵がこのような不条理な結末を呼び込む。エンタメとしては失格かも知れないが、芸術ってこのような人生の負の部分をあからさまに照らし出すものじゃ無い?芸術とまで言わずとも文芸作品としての格は十分備えてる。
極度に抽象化されたシンプルな絵柄が悲劇の負荷を和らげつつ教訓を浮き彫りにする事に成功している。
ラストでは両者の再会を示唆しているが、もっと突き放した絶望感が前面に出ても面白かったかも。拒否コメントがすごい事になるだろうけど、それくらい挑発的な作品をこの絵柄で見てみたい気もする。
肝心の離婚や面会不履行の原因が論理的に詰め切れていない点に不満の向きもあろうがそこは作品にとって本質的なテーマでは無い。
白眉は山本と真美の行末で、再婚という展開を選択していたらその後のさくらとの関係は全く違うものになっていた。すなわち構想として破局(?)は最初から予定されていたにも関わらず読者の興味をそっちの方に引っ張るだけ引っ張り、ミスリードで翻弄する構成力が素晴らしい。
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今朝もあの子の夢を見た