3.0
不満の最たるものは
主人公の富沢琢矢と久我山天善の決着がつかずに終わった本作、特に相当屈折気味(天善の娘、沙貴はそう言った)の一流企業マエジマの社長令嬢、まだ女子大生の前島マリエの扱いが残念。
前島マリエは好きでもない相手と政略結婚させようとする母に対する反感から屈折していた。真鍋政一との仕手戦はほとんど何もせずに琢矢とショーケンのお陰で制して(思い掛けないヒントを与えて遊び人の社長婦人が来る場を調べた程度)、15億を手にした。経済連の紅一点の母譲りの資質(沙貴の誉めそやしはどこまで本心か疑わしいが)を開花させ、それを元手にマエジマをお見合い相手のところより大きくした前島マリエが見たかった。
世界中から優秀な生徒が来るビジネススクールで沙貴がかつてない成績を収めた後、塗り変えた楊美娟(ヤン・メイチュワン、若くしてあらゆる分野で中国人に指南している)も本作のキーパーソン。スクールライフの描かれなかった前島マリエだが通う大学は凡庸なところということにして、にも関わらず沙貴と美娟に遜色のない活躍を見せる前島マリエが「第3の真の東洋の奇跡」と称賛されてもよかった。
篠田冴子は亡き夫の株を大事にして元からビジネスに明るくなく、レイチェル・ヘイズワードはウェルネス社の優秀なチーフといっても長じた部門は限定的。母に好きでない学部に行かされていた前島マリエがそこの事柄も極めて母を見返しても良かった(「おもしろくなーい!!」「るせんだョ!!」などのフランクな話し方もしていた前島マリエが母にためていたものを炸裂させる時は女性語を使うのはよかった)。
閑話休題。前島亜美と飯豊まりえを合わせたような名前だが、関係ない(本作は96年に連載終了)。
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100億の男