1.0
それほどでも、色々無理が。
お話しはそこそこ面白かったと思います。歴史考証やSF的な設定を褒める声が非常に大きいですが、実のところこの作品でそこが一番ダメ。結局のところ、作者の関心は、男女が逆転した大奥にしかなく、病気も若い男だけが死ぬという設定も、このためのご都合合わせに過ぎない。マジに江戸時代初期段階の社会で作中のような病気が流行ればどうなると思います?この病気、実のところ若い男しか罹らないようですよね。詰まるところ女は、若い男とは結婚できず、中年以降の年寄りと結婚するしかない。それも一夫多妻か、妻どい婚式。超老人支配社会の出現です。これだけでは、女権社会は生まれないと思います。さらに厄介なのは幕府権力の早急な弱体化。作中では、だからこそ大奥が生まれたことに繋げていますが、幕府が明らかに弱体化に戦の世に逆戻り、いやいや、実際はそうはならないよう、徳川一門で年齢がいった人物が将軍になることで事態をおさめようとするでしょう。上記のごとき超老人支配社会の出現です。しかしそれ以上に、働き手であり技術の継承者である男性が極端にその数を減らしたら、幕府崩壊どころか文明そのものか崩壊し、社会レベルが大幅に退行しかねません。結局のところ、このお話しは、SF的な思考について最初から欠如しているのです。考証の不備は色々ありますが、この世界、将軍から生まれた赤ん坊はだれが育てているのでしょう?男ばかりの大奥はもちろんその場ではないですよね。大奥というのは将軍のお相手を集めておく場だけでは無いのです。将軍の子供を養育し成人させる場でもあったはず。男系女系の問題も華麗にスルーされていますが、現在の天皇家の問題で皇統が危機に瀕しながらも男系への強い拘りから離れられない状況あるように、日本人が容易にこの問題を乗り越えることは出来ないと思います。例えば大奥の男性に徳川一門の出身者がいないのはなぜでしょう?当時の言葉に「劣り腹」という言葉がありますが「劣り種」という言葉があっても良いように思うのです。いやそんな四の五の言っている事態では無いのだとしたら、それこそ社会や文明の崩壊レベルでは?まだ書きたいことは尽きませんが、SF時代両面で考証のご都合主義が過ぎます。
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大奥