第十話 海のある風景(1)
あらすじ
▼第1話/流された記憶(前編)▼第2話/流された記憶(後編)▼第3話/白い返事▼第4話/午後のフットワ-ク▼第5話/海のある風景▼第6話/老木の舞▼第7話/春の惑い▼第8話/片隅 ●あらすじ/少年はじめは、飲んだくれの父親に、学校へも行かせてもらえず、働いている。ある日、新任の女教師が、はじめを学校へ来させるように、父親に直談判にやってきた。だが、激怒した父は暴力に訴え、はじめは頭部に怪我を負ってしまう。そして、もうろうとする意識の中で、彼は手に斧を握りしめるのだった。意識を取り戻した時、父は頭を割られて死んでいた。だが、やってきた伊勢湾台風によって、家も、父の死体も、何もかもが押し流されていく。歳月が過ぎ、はじめは、女教師の保護のもと成長し、医者となっていた。だが、ある日、工事中に発見された白骨遺体が、父のものであることに気づく(第1話)。▼頭蓋骨の傷が生前についたものか、死後についたものかを確認するため、はじめのもとに父の遺体が運ばれた。23年ぶりの父との対面。確かに、頭蓋骨には、あの時彼がつけた傷が額に刻まれていた。死後の損傷によるものと警察に報告し、それですべてが終わったかのように思えたその時、女教師が衝撃的な告白をはじめる(第2話)。▼女性新米刑務官の田村と、収容者の村上優子は、何かにつけて衝突する間柄。優子は、幸せな結婚生活を送っていたのに、ふとしたことから知り合った男と関係を持ち、横領事件に関わってしまった女だった。そして、彼女は離婚した夫や子供に、許してくれるのなら、12月1日の午後1時に、紙ヒコ-キを投げ入れてほしいと手紙を書き続けているのだと、ある日、田村に打ち明ける。だが、その時間は、優子は作業に従事していて部屋の外に出られる時間ではなかった(第3話)。
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