ホークウッド

あらすじ

14世紀、イングランドとフランスの百年にわたる戦争が始まろうとしていた頃。金で雇われ、戦いを生業とする者達--傭兵が各地の戦場で活躍していた。“白鴉隊”という小さな傭兵隊を率いる若き傭兵隊長ジョン・ホークウッドは、一人の王子との出会いを機に、百年戦争という大きな戦いに巻き込まれてゆく……。

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ユーザーレビュー

  1. 評価:5.000 5.0

    精緻でダイナミックな史劇の佳作

    正直何でレビュー少ないのか意味が分からんぐらいの良作。時は14世紀、英仏百年戦争初期(ジャンヌ・ダルクが登場するまさに100年ほど前)、フランスの戦場を生きる傭兵隊長ジョン・ホークウッドを描く戦史劇です。
    当時のヨーロッパの戦争は、互いに身分の高い捕虜を取っては身代金を支払い解放する、いわば上つ方の出来レースのようなもの。とはいえしっかり戦闘行為はある訳で、そこを担ったのが小規模ながらも私兵一軍を率いる傭兵隊長達。英仏百年戦争を描いたマンガは幾つかあるけど、この戦争の話で傭兵隊長を主人公にした作品はこれが初めてだったのでめっちゃ新鮮でした。
    この作品の主人公ホークウッド隊長は、身内で小競り合いを続ける小領主に雇われた事で、次第に戦火を拡大する英仏百年戦争に巻き込まれていくのですが、このホークウッド隊長と彼の率いる傭兵団の面々が、教科書では「領地を接する領主同士の小競り合い」と一行で済まされる小さな戦いの中で、豊富な経験と知略を生かし、最大限の利益を獲得するべく奮戦する姿は痛快の一言です。戦争のグランドデザインだけ考えがちな騎士の面々と違って、「目前の戦いにどうやって勝つか」「勝ってどのように利益が得られるか」を優先する彼らは、敵前逃亡も奇襲もお手のもの。現代人にも理解しやすい合理性とプロ精神を持ってるんだよね。
    また、膨大な軍資金をどうやって賄うか、賞罰をどのようにするか、といった中世の戦争の細かい裏側を、全く飽きさせずテンポよく描いているところも素晴らしい。「ベルセルク」や「ヴィンランド・サガ」でも傭兵の裏側を興味深く、かつ詳しく描いていましたが、この作品での傭兵団の描写は前述二作品にも決して劣りません。絵が上手く、背景描写のひとつも疎かにしない作画によって、鉄と血と泥の匂いさえ感じられるよう。
    キャラクター的には、やはりホークウッド隊長がカッコいい。仕事に手を抜かない、渋い大人の男の魅力が溢れてるんだよね。話が進むと、英国のブラックプリンスやらといった歴史上の将軍達とも刃を交える事になりますが(敵の面々がこれまた濃いんだ……)、史実では「歩兵の長弓が騎士の時代を終わらせた」と伝えられるこの中世の大戦禍を、ホークウッドがどう戦い抜いたか目が離せなくなると思います。
    未読の方は、まずはお試しを覗いてみて!冒頭の合戦シーンだけでも、面白さが一目瞭然だから!

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