ブスの鍵
えー、昔から、「男は度胸、女は愛嬌」などと申しまして、女性というのは多少、見てくれはアレでも、立ち居振る舞い、雰囲気次第では魅力的に見える、とまあ、こういうことなんであります。
なんて書き始めてはみたけれど、それにしたって限度があるだろ。
というレベルのブスである。
そのブスが、実にたくましく世の男性たちを手玉に取る、というストーリー。
彼女が男性をゲットするテクニックは、胃袋をつかむとか、上手く焦らすとか、まあよくある話で、そこまでの説得力はないのだが、核心は、そういう小手先の技ではない。
最大のキーポイントは、「自信」ではないかと思う。
主人公の女性は、「私って男性から見て魅力的に映るかしら?」などと疑わない。
かといって、「私って美しいわ」と勘違いしているわけでもない。
だってブスなんだから。
ただ、自分がブスであるという事実に、人生をコントロールされていない。
彼女にとって外見はアドバンテージではないけれど、コンプレックスでもない。
そんなもの、「どうでもいい」のだ。
外見が武器にならないなら、別の武器で勝負すればいい。
そして、必ず勝つ。
然るべき技術を行使すれば、男は必ず自分にひざまずく。
そういう絶対的な、自信。
その自信こそが彼女の核であり、そういうブスの描き方は、なかなか面白いと思った。
十年くらい前に、首都圏で「婚活殺_人」なんて呼ばれた事件があって、男を次々とたぶらかしては殺して財産を奪った女が逮捕されて「毒婦」などと称されていたが、どんな美人かと思って見てみたら、それはもうアレな感じだった。
ただ、法廷での彼女の言動からは「なぜにそこまで」という自分の魅力に対する圧倒的な自信が感じられた。
男を虜にするブスの鍵には、案外、共通点があるのかもしれない。
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