独占漫画家インタビュー:皇りん「恋愛にウェイトを置かない男性に惹かれる!幼少期は監察医になりたかった皇先生が、漫画家になったきっかけは?」
ピュアで可愛い年下の旦那さんが話題の「19歳の夫には秘密がある」 。皇先生が理想とする男性キャラクターには、ある共通点があるそうです。幼少期は監察医になることが夢だったという皇先生が、どういう経緯で漫画家になったのかも聞いてみました!
年下の男の子・卯月の可愛さに藍名も皇先生もメロメロ
――――めちゃコミックで先行配信中の「19歳の夫には秘密がある」 (皇りん・伊吹芹) ですが、レビューでもたくさんの高評価をいただいています。ご自身の実感としてはいかがでしょうか?
ありがたいことに、たくさんの方に読んでいただいているなと感じています。レビューやランキングはもちろん、Twitterなどでも「19歳の夫には秘密がある」 をきっかけにフォローしてもらったり、感想をいただいたりすることが増えました。読んでくださる皆様の暖かい応援には、いつも励まされています。こうした結果が得られたのも、原作者の伊吹芹先生をはじめ、いつもサポートしてくださる皆様のおかげです。
――「19歳の夫には秘密がある」 で、特にお気に入りのエピソードはありますか?
思い浮かぶエピソードはいくつもありますが、一番は卯月(狩野小路卯月(かのうこうじ うづき))が藍名(田中藍名(たなか あいな))の誕生日に改めて婚約指輪を渡すシーンです。結婚動機は不純な二人でしたが、卯月が藍名との関係性を改めて構築しようとしているのが印象的でした。
卯月が藍名の誕生日に婚約指輪を渡す
19歳の夫には秘密がある
(c)
皇りん・伊吹芹
あと個人的にお気に入りのシーンがあって、行為後の男性の態度に関して藍名が指摘したあとに反省した卯月が「くっついて寝よ」と言って藍名を誘うのですが、それは自分でも執筆中「可愛いな…」と思いました(笑)。
「くっついて寝よ」と藍名を誘う卯月
19歳の夫には秘密がある
(c)
皇りん・伊吹芹
恋愛にウェイトを置いてないキャラに惹かれる
――「19歳の夫には秘密がある」 をはじめ、他作品「有川教授は溺愛が過ぎるようです。」 (皇りん/グループH) や、「10年後、君はきっと笑ってるから。【かきおろし漫画付】」 (RIN。/ぶんか社) などでもさまざまな魅力的な男性を描かれていますが、何か共通点はあるのでしょうか?
実は、私の理想のタイプは「SLAM DUNK」(井上雄彦/集英社)の流川くん(流川楓(るかわ かえで))なんです(笑)。何か打ち込めるものを持っていて、恋愛に対してはあまりウェイトを置いていない人やキャラクターに惹かれます。
そういう意味では「有川教授は溺愛が過ぎるようです。」 の有川教授(有川祐介(ありかわ ゆうすけ))も、「10年後、君はきっと笑ってるから。【かきおろし漫画付】」 の瀬田(瀬田恭也(せた きょうや)も、それぞれ夢や目標を持っていて、本来はそちらのウェイトが大きいキャラだと思っています。
仕事への思いを指摘され、苛立ちを見せる瀬田
10年後、君はきっと笑ってるから。【かきおろし漫画付】
(c)
RIN。/ぶんか社
でも、その軸を揺るがすような大きな出会いが、有川にとっての美玲(みれい)であり、瀬田にとってのゆり(藤野ゆり(ふじの ゆり)だということです。男性像に限らないんですが、自分自身に対して誠実であるキャラクターを描いていけたらいいなと思っています。
一番近くで有川の夢を支える美玲
有川教授は溺愛が過ぎるようです。
(c)
皇りん/グループH
――本作の今後の見どころについて教えてください。
今後どうなっていくのかは私も気になるところなので、原作者の伊吹先生にぜひ聞いてみたいところですね(笑)。個人的には、藍名と卯月の関係性の変化や、卯月の成長に注目していただきたいです。
夫婦として過ごすうちに、少しずつ二人の間に流れる雰囲気が変わっていく
19歳の夫には秘密がある
(c)
皇りん・伊吹芹
自分の生み出したキャラクターの言葉に励まされることも
――ご自身や身近な人、周囲の人を投影していたり、共感したりするキャラクターはいますか?
キャラクターには大なり小なり私の考え方や性格、理想が反映されているので、共感することは多いですね。周囲の人をモデルにしたことは今までにないかもしれません。
――共感できるところが特に現れているシーンはありますか?
「10年後、君はきっと笑ってるから。【かきおろし漫画付】」 で、ゆりと恭也が立ち寄ったコンビニで、ゆりのチームが企画した商品を見つけたシーンです。
仕事へのひたむきな思いを語るゆり
10年後、君はきっと笑ってるから。【かきおろし漫画付】
(c)
RIN。/ぶんか社
仕事へのひたむきな思いを語るゆり
10年後、君はきっと笑ってるから。【かきおろし漫画付】
(c)
RIN。/ぶんか社
ゆりが恭也に語ったあの言葉には、自分自身も励まされることがあります。漫画も同じで、多くの方に読んでもらえるような作品を作り出すことは本当に難しいと思っています。でも私もゆりのように、悔しさすら糧にして、これからさらにいい作品を作っていくぞ、という気持ちで日々描いています。
――ストーリーはどんな時に思いつくことが多いですか?
お風呂に入っている時が一番浮かびますね。思考の世界にトリップ出来る貴重な時間です。
あとは、インプットされたものが多ければ多いほど面白い漫画が作れると思っているので、漫画はもちろん映画や舞台など、ジャンル問わず興味を持ったものには積極的に触れるようにしています。
――もしストーリーづくりなどに詰まってしまった場合、どんなことをして気分転換をすることが多いですか?
原稿から離れる時間も大切だと思うので、愛犬と戯れたり、寝たり、ジムで身体を動かしたりすることが多いですね。
――お仕事をする際に、絶対欠かせないものはありますか?
描く時に欠かせないもの…、物理的にはWacomの液晶タブレットとクラシックペン、画面に貼るペーパーライクフィルムですね。自分にとってしっくりくるツール環境というのがあって、それが一つでも満たされていないと途端に絵が描けなくなっちゃうんです(苦笑)。
執筆中のお供という意味では“お茶”と“音楽”は欠かせません。あとはゲーム実況動画を流していることも多いです!
小さいころは監察医になりたかった
――皇先生は、最初から漫画家を目指そうと思っていたんですか?
大学時代、本格的に自分の進路を考え始めた時には、アニメーターになりたいと考えていました。そこで憧れのアニメーターの方にお手紙を出して、師事することになりました。ある時、その方がコミケに出るということで、私も同人誌を描かないか、と誘われたのが初めて漫画を描くきっかけでした。それから漫画家という職業が将来の選択肢の一つになったんです。
ある電子媒体のレーベルさんに作品投稿をしてみたところ、お仕事させていただけることになり、そのお仕事が次のお仕事に繋がり、そして今に至る…という感じです。
実は幼少期の夢は監察医だったのですが、同時に絵を描くことやアニメ・漫画もずっと好きで、漫画家に憧れを抱いていました。結果的になりたかった職業に就けているので、本当に幸せ者だと思います。
――今の作風やご自身の人生などに、影響を与えた作品はありますか?
読んできた作品のすべてから何かしらの影響を受けているとは思いますが、特に印象に残っている作品は「イタズラなKiss(フルカラー版)」 (多田かおる/ミナムプロ・エムズ) と「LOVELESS」 (高河ゆん/一迅社) ですね。「イタズラなKiss(フルカラー版)」 (多田かおる/ミナムプロ・エムズ) は子供の頃に観た同名のテレビドラマが印象的で、そこから少し大きくなってから原作漫画を読みました。どんなに冷たくあしらわれても、一途に入江くん(入江直樹(いりえ なおき))を思う琴子ちゃん(入江琴子(いりえ ことこ))から、恋愛のイロハを学んだような気がします(笑)。「SLAM DUNK」(井上雄彦/集英社)の安西先生(安西光義(あんざい みつよし))の有名なセリフ「あきらめたらそこで試合終了ですよ…?」に通ずるものがありますね。
表紙
イタズラなKiss(フルカラー版)
(c)
多田かおる/ミナムプロ・エムズ
- イタズラなKiss(フルカラー版)
- 高校3年生の琴子は、入学式の日に一目ぼれした天才イケメンの直樹に、ついに想いを打ち明ける決心をした。ところが勇気を出してラヴレターを渡そうとした琴子に直樹は「いらない」。さらに、「頭の悪い女は嫌いだ」と冷たく言い放つ。しかし、偶然にも、直樹と同じ屋根の下で暮らすことになった琴子の運命は…。笑いあり…
「LOVELESS」 (高河ゆん/一迅社) は高校生の頃に初めて読んだんですが、「愛とは何ぞや…」と深く考えさせられた作品です。様々な愛のカタチを見ることができて、知見が広がりました。
表紙
LOVELESS
(c)
高河ゆん/一迅社
――他に、純粋に好きな漫画や、今ハマっている漫画などはありますか?
純粋に好きな作品は「幽★遊★白書」 (冨樫義博 1990-1994年) 、「レベルE」 (冨樫義博 1995-1997年) 、「SLAM DUNK」(井上雄彦/集英社)、志水アキ先生がコミカライズされている、京極夏彦先生原作の「百鬼夜行シリーズ」ですね。本当に大好きでよく読み返しています。
表紙
幽★遊★白書
(c)
冨樫義博 1990-1994年
表紙
レベルE
(c)
冨樫義博 1995-1997年
「百鬼夜行シリーズ」の一つ「鉄鼠の檻」
鉄鼠の檻
(c)
京極夏彦・志水アキ/講談社
今ハマっている漫画は「断罪のドラグネット」(椹野道流・小田すずか/KADOKAWA / 角川書店)!美しい監察医のルスランさん(ルスラン・クサカ)や、カッコいい刑事の真嶋さん(真嶋了(さなじま りょう))と一緒に事件を追っていくのが楽しいです(笑)。今でも生まれ変わったら監察医になりたいと思っているので、追体験させてくれるところもこの作品の魅力かもしれません。
――交流のある漫画家さんはいますか?どんなお話をするのでしょうか。
交流のある作家さんはいるんですが、皆さん忙しいので会う機会はなかなか少ないですね。お会いするときは大体お仕事の話ばかりになってしまいます(笑)。でも情報交換や、同じ職業だからこその話が出来るのはとても楽しいですよ。
――今後、挑戦してみたいジャンルやストーリーはありますか?
挑戦してみたいのは、ミステリーやサスペンスです!大好きなジャンルなので、いつか原作者としてはもちろん、作画担当としてでも、そういう作品に関われたら嬉しいなと思います。
――最後に、今後の展望を教えてください。
一番は、読んでくださる皆様が楽しいと思えるような作品をお届けし続けることです。いつかメディアミックスしてもらえるような作品を描いてみたいな…という淡い夢もありますが、それは結果としてついてくるものだと思うので、これからも焦らず腐らず諦めずに漫画を描き続けていきたいです。
恋愛に重きを置かない人に惹かれるということで、皇先生の描かれるキャラクターは、確かに一本筋の通ったキャラクターが多い印象ですね。いつか皇先生の作品がメディアミックスされて、さまざまな形でこの世に飛び出していく日がやって来るのが楽しみです!
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