4.0
とても現代っぽい正統派少年漫画
ストーリーは全体に重く暗いけれど、決して子供に理解できないほど複雑ではない。
また、たとえ細かい設定が分からずとも、単純な勧善懲悪のエンターテイメントとしての側面だけで、低年齢の読者も十分惹き付けられる。
キャラクターは魅力的で、バックグラウンドも一人一人とても丁寧に描写されているけれど、行動原理はみな明快で一貫しており、答えの出ない問いに悩み続けてブレたり、登場時と終盤で人間性が大きく変貌したりといった意味での深みはない。
もちろん主人公をはじめ多くのキャラクターが成長はするにはするのだが、あくまでもそれぞれのキャラクターが本来持っているベースに、より良いパーツがちょっと加わっていくだけという形の描写に絞ってある印象を受けた。
善人は初めから善人だし、悪人はずっと悪人である。
一部は人から鬼になることで善人から悪人になっているが、そこには必ず同情できる理由が用意されている。
少なくとも炭治郎たちが生きるこの時代の登場人物には、人間の悪人は一人もいないし、鬼の善人も片手で数えられるほどしかいない(しかも鬼の善人は登場した時から味方サイドであり、敵から味方に変わるものはゼロ)。
そういった意味で、非常にシンプルな作りの作品だと思う。
あまりに流行るのでどんなものかと興味を持って読み始めたが、なるほど納得という感想だ。
単純であり、決して長くもないストーリーの中に、様々な人の様々な琴線に触れる要素を、よくぞこれだけバランスよく詰め込んだものだと思う。
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鬼滅の刃