5.0
秀逸な作品
著者の作品は稲中から全て読んだが、その中でも特に完成度の高い作品といえる。
同じ時間軸で全く対照的な2つの物語が進行していくが、それは我々普通の人間が普通の幸せを追い求めて生きている日常の中に、同時に狂気も存在しているという当たり前の事実を描写している。
そもそも普通という考え方はあくまで数ある人格の平均値であり、当然その平均値から大幅に逸脱している人間も同じ社会に存在しているという当たり前のことを突きつけている。
今目の前を歩いている人間が“普通”であるなど誰も保証はできない。
実に恐ろしい物語だと思う。
場面もテンポ良く入れ替わり、普通の日常の裏に常に狂気があるという恐怖をしっかり伝えてくれている。
そして狂気は最後に“普通”に逮捕されて終わるところまで完成されていると個人的には感じました。
古谷実という作家の一つの完成された作品と思っています。
言うことなしに面白い!
- 0
ヒメアノ~ル