5.0
シュールさ控えめ、愛深め
まず、作者の描く絵が好きです。
スッキリとした無機質な線はおしゃれで気持ち良い。
脚を開いた立ちポーズも、力を抜いて猫背で歩く姿も、座って机にぐんにゃりと投げ出した手の感じもたまりません。
年齢やキャラ、その時の立場によって姿勢が違っていたり、本当に絵が上手いんだなぁと思います。
各回の扉絵の父娘のツーショットは誰も間に入れない恋人同士のような雰囲気の良さ。主人公がかっこいいというか色っぽいです。
そして全話読んでから、その画というか状況に意味がある事に気付きました。
作者の言葉遊びには定評がありますが、絵にも隠されたメッセージがあったとは。
もちろん内容も面白いです。
みんなキャラが立っていて、ドタバタか笑えるし、漫画業界の内輪話も興味深いです。
サブタイトルで他の漫画の題名の語呂合わせが使われているのも、漫画というもの全体への愛を感じるし、元ネタを考えるのも楽しい。
「下ネタ作家って、そこまで隠す事か?」という意見もあるけれど、それはこの作品の土台であり、
「呼吸の仕方で飛躍的に強くなるなんて事あり得ないよね」と言うようなものではないでしょうか。
主人公が抱えるコンプレックスや心の傷は、もどかしかったり切なかったりするけれど、そういうものは大なり小なり誰もが持っているもので、読んでいるうちに自分のそういう負の感情に囚われなくてもいいんだ、と癒されていきます。
最後の最後に「姫」という名が、ただみんなの愛情を受ける存在として祖父から名付けられた名前というだけでなく、ここにも作者の言葉遊びが隠されていた事がわかって、「やられたー!」って感じです。
オチは最初から仕組まれていたんですね。
最後に、いちファンとして言いたい。
漫画家の多くが、そして作者自身も持て余しているという過去の作品の生原稿。
……欲しい…。いらないなら下さい!!
- 3
かくしごと