黄氏花さんの投稿一覧

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    人の心がていねいに描かれている

    「霊とは何か?」と、第1話で主人公が考えを述べる。それが自分の考えと似ていたので安心して読めた。この作品は、人の霊を個人の魂として尊重している。

    私は「ホラー」が苦手だった。でも、この作品を読んで気がついた。私が嫌だったのは、「ホラー」ではなく「霊に失礼なホラー」だった。霊を「排除すべき邪悪な集合体」として描く作品が嫌だったのだ。

    「生者の行進」は、そういう作品とは全く違う。作者は、生きている人間の心も死んだ人間の霊も尊重して描いている。第1話を読んで、この人の作品なら最後まで読んでも不快にならないと思った。悪霊の群れも登場するが、基本的には霊を個人の魂として描いている。おそろしい表現も多くあったが、それでも作者を信頼して読み進んでいけた。この人の世界観なら大丈夫だ、と。

    この作品は、霊やゾンビを怖がる「ホラー」というより、霊の見える少年が主人公の「サスペンス」だという印象。主人公は霊が見えるが、悪霊と戦う話ではない。霊の助けを借りて、事件の謎を解き明かしていくストーリーだ。ただ、物語には「この世のものではないもの」が登場し、それにより恐怖感がわき、ゾッとさせられる。その点においては「ホラー」でもある。

    残虐な犯罪の話なので、死んだ人の霊だけでなく、生きた人間である「犯人」の恐ろしさも強く描かれていて、そちらにもゾッとさせられる。被害者が殺されたときの様子が詳細に描写されていて、それは絵ではなく文字だったが、おぞましいものだった。犯罪の生々しい手記などが気持ち悪くて読めない人にはお勧めできない。

    また、霊が人間の身体をもてあそぶ場面もある。目玉や内臓のグロテスクな描写の苦手な人にもお勧めしにくい。第1話のはじめに出てくる悪霊も、とんでもない姿をしている。でも、そういう表現の気持ち悪さを好む人向けの作品ではない。私もグロテスクな作品は苦手だが、この作品は楽しめた。なんといってもストーリーが面白いのだ。心理描写も見事。最後まで読んで、もういちど読みたくなって、はじめから読み返した。優れたサスペンスというものは、何度でも読み返したくなるものだ。

    心身の具合が悪いときは、本当に避けたほうがいい。登場人物に共感しすぎて、つらくなってしまうだろう。

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