5.0
想像力の無い方は読んでも理解できないかも
『どんなわがままな主人公?』という先入観で読み始めたが、普通の若い女性だと思う。
確かに、こんなに理解ある優しい夫や優しい御両親がいなきゃ、この最終話には辿り着けなかったも。
まず甘えやわがままで、あの恐怖心はあり得ない。
物を捉える感覚が全て恐怖に変わる視点が上手く表現されていて、これはご本人が体験されたからこそ、体験したことない私でも、こんなホラーな世界に観えるのか…と疑似体験出来る。知ることが出来てよかった。
誰が自分がこんな状態になると思うだろう?
この病は、どんな人にも起こり得る、原因が未だに分かっていない病だと最終話でしっかり説明がされている。
主人公は、妊娠前から軽度うつであったという点からレビューではめちゃくちゃ叩かれているが、現実には妊娠前からうつでもなんでもない女性も1000人に1人がなる可能性のある病だと書かれている。
妊娠する全ての女性がこうなる1000人に1人の確率で誰しもなる可能性が皆あるということ、その視点でこの漫画を読み取らなければ『主人公の甘え、お花畑』で終わってしまうと思う。
この主人公の背景(元うつ完治状態での妊娠)は一旦横に置いて
普通の若い女性が大好きな人の子どもが欲しい、生みたいと思い、結婚、妊娠し、女性ホルモンの病で『怖い、死にたい、違和感、不安』に毎日駆られる現実が起こり得ること。
それはわがままではなく、甘えではなく『女性ホルモン』によって振り回されていること。
誰が自分がそうなると思うだろうか?
私は子どもが大好きでずっと教育、療育現場にいたので『かわいい』と思えない感情が分からないが、そう思えないと責められ、自分も追い詰める現状は見直され、母親が自分を責め追い詰めるような環境を変えていく必要があると思う。
突然今までの自分でいられなくなる不安や恐怖はホラーそのもの。
病は人を変える。
突然今までの自分でいられなくなり『甘えだわがまま』と責められ、自分もコントロールできずに自分を責める世界からは死は破綻しか生まれない。
女性ホルモンの影響が、人を変える事を知っていれば、それを手がかりに自分を見失わずに済む。
作者は『知らない恐怖』『女性ホルモンが死を考えさせ不安に襲わせる、人格とは別物である』と伝える事で母子を助けたいとの思いで実体験を描いてくれている。
私はそれを知れて偏見を持たずに済んでよかった。
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妊娠したら死にたくなった~産褥期精神病~