5.0
恋愛は人を幸せにするか?
鎌倉時代、公家社会の頂点に立つ後深草院の後宮に、なんの覚悟もないまま放り込まれた名門貴族の娘あかこ。
父とも兄とも慕った後深草院に文字通りの寵愛を受けるが、後宮のしきたりや女の争いに巻き込まれ、すれ違いが生じる。
父の死を機に、初恋の男西園寺実兼や後深草院の異母弟にして仁和寺御室性助法親王、同じく異母弟にして当時の帝の亀山天皇、藤原氏長者である関白鷹司兼平などと交わりながらも、後深草院を思い切れない。
後深草院もまた多数の妃や召人を持ちながら、あかこに執着を示す。
多数の人を巻き込み、政治的な動きにも巻き込まれながら、二人の関係は徐々に変化していく。
かなりセクシャルな描写がありますが、作者特有の大胆な省略表現でいやらしさはゼロです。
個人の感情より大切なものが山ほどある時代、それでも自分の感情に正直に生きたあかこ。
彼女は恋愛をすることで幸せにはなりません。
寧ろ不幸を引き寄せています。
それでも恋することを諦めない彼女を通じて、生きる意味や愛とは何かを考えさせる作品です。
- 22