この時、チヌちゃんは若様が明日セツさんと祝言を挙げると思ってたんだよね。別れた事を知らなかったから。
それでもなお、若様を凶刃から護ったんだ…
その事は若様も気付いてるよね。
若様に全身全霊で愛されていた寿子さんが全身全霊で若様を護った、ある意味それは当然の事。けれど若様に棄てられたチヌちゃんは違う。寿子さん以上に深い無償の愛と献身で護ったんだよ。何の見返りも無いのに自分の命を懸けて愛する人の幸せな未来を護った。まるで愛する王子様の幸せの為に海の泡になった人魚姫みたい。
人魚姫の王子様は何も知ることすら無かったけれど、若様は気付いてあげて…健気でいじらしいチヌちゃんのそばに、ずっといてあげて。
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声なきものの唄~瀬戸内の女郎小屋~(分冊版)
220話
第63話(2)