大垣の60歳 藤田 賢司さんの投稿一覧

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    健常者と障害者が共に生きる難しさ

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    この作品が描かれたのが2009年だとすれば、当時は障害者と健常者が共に生活する事がまだまだ常識ではなかった時代。障害者への差別や偏見がまだまだ沢山あった時代だ。と言う事を考えなければならないと思います。学校は勿論、職場においても。
    そこに、硝子がやって来ます。硝子は、原作で明らかな様に、母から厳しく「強くなりなさい」と言われて育った少女。障害者である事を隠さず、堂々と入って来る。将也達の戸惑い。将也にしてみれば、偏見とか、差別とか言う事ではなくて、単純に「からかった」だけ。しかし、そう言う形で他の子との関係を築いて来た彼にとっては、ごくごく普通の態度が壮絶な虐めへと発展してしまう。単なる遊び。であったはずの弄りが周りを巻き込む事で。
    虐めが発覚した後には、今度は将也自身が虐めの対象に。
    硝子の立場を、硝子の気持ちを痛いほど知ることになってしまう。
    自分の行った事の愚かさを知った将也は、罪の償いの方法を考え始める。それが彼にとっては、かつて虐めに巻き込んでしまった同級生との関係のやり直し。
    それぞれの立場や考えかたのなかで織りなす人間関係は、時に切なくて、時に腹立たしく見ている側の心情を揺れ動かしてゆく。何度も繰り返されるドンデン返しの末に、全く違う人間同士が、言葉や、時には態度で互いの存在をわかり合って行く。仲良くなるだけが人間関係ではなくて、そこにその人が存在する事を認め合う事が人間関係であり、本当の友達関係なんだ、貴方がそこに居てくれる事が大切なんだと。
    一人一人の登場人物の中に、いくつもの自分を重ね合わせてこの作品を見る時、何とも切なく、何とも恥ずかしく、何とも悲しい。何ど見ても、新鮮で、新たな気づきを与えてくれる。
    そんな素晴らしい作品だと。私は思います。
    この作品を世に出してくれた、作者。
    ありがとうと伝えたい。

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