5.0
この作者は達観している
他のサイトの広告からたどり着き、試し読みで引き込まれていった。人の顔の、特に女の顔の美醜をテーマにした物語が好きで、大変興味深く読めた。安易な整形に警告したり、人を見た目で判断するなというお決まりの題材かと思いきや、壮大な愛を扱って終結する。最後の章は涙を流してしまった。不幸のどん底を経験をしたからこそ達観出来た人間は強い。登場人物で土子という女、容姿の醜さと心の醜さが救いようのない人間であるがこれも定理であり真実なのか?と思ってしまった。外見は内面の鏡である。もっと柔軟な心といい意味での勘の良さ、時代を読む力、情報収集力、他人を不快にさせないマナー、これらを持っていたらあのような容姿にはなりようがない。情報があふれる世の中で、自分をある程度に磨くことも出来ず不平不満を言い、輝いている者を妬み失脚させる。自分を客観視出来ていない。すべてが、醜いのである。この作品には原作者が特にないようだが、だとすれば作者がこの話を編み出し絵を描いたということだ。年代がどのくらいの作者か私は知らないが、割と年齢を重ねた、紆余曲折した経験をもつ達観した方なのではないか。若いだけの夫婦が、やがて俗世間の名声から離れたところに行き着き、崇高な精神の領域にたどり着く。高い精神性は塩酸の毒牙からさえも結果的に美しい顔を守ってしまった。一種の崇高さが見せたマジックだ。人の姿かたちというもの、心の在り方、絶対的な愛。目指さなければいけないもの。沢山考えさせられた作品だった。
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愚者の皮