1.0
ヒロインに嫌悪感
どうもこの主人公の事は好きになれなかった。
謙虚で常識があり思いやりもあるようなていで描かれていくが、本人も気づかぬくらいの心の奥底にイケメン御曹司から好かれたいという女としての欲が、はじめから、ある。
自分とは目を合わせない取引先の相手である理人。遥菜は退職の挨拶に行った時まで自分の顔を見てもらいたいと望んでいる。常識的に考えて仕事相手なのに顔を全く見ようとしない理人に問題がある。こんな相手とおさらばできるのだから本来なら清々するものだ。で、家政婦を依頼され初めて目が合った時の遥菜の表情!ただのびっくりではない。だから無理だと言いつつも引き受けたのだ。
契約結婚の話を押しきられた時も然り。親から向けられる結婚のプレッシャーや元カレ、略奪女への当て付けを差し引いたとしてもだ。結婚し1年後離婚で問題クリアという自分勝手で陳腐な理人の思いつきに、親をだます事の罪や戸籍にキズが付くという最大の問題にふれることもなく言いくるめられてしまう。そして遥菜の実家に行く事で理人が自分の愚かさに気づき遥菜に詫びた時、なんと遥菜は結婚する事はなかったと思うから親孝行になったとまで言い理人をフォローするのである。とんでもない親不孝者だ。実に男に都合のよい女である。元カレは最低のクズだが、責任の一端は遥菜にもあったのではないかとさえ思えてくる。
遥菜の謙虚さをみせるエピソードの結婚指輪購入のくだりでは、高級ブランドのではなく普通のを理人に提案するがこれは契約妻への提供物であり遥菜への贈り物ではない。それを偽の結婚なので普通ので、とか金銭感覚の違いを考慮しても勘違いしている。こういう指輪は本当に好きな人に…とか、そんな相手がいないからこんな事をしているのは分かっているのに、そこには下心と期待が隠れているのだ。
1年後離婚と心に言い聞かせながらも理人に尽くしていくのは、心の奥底であわよくばそうならない未来をどこかで期待しているからなのだろう。
遥菜が口や心の中で言っているセリフは彼女の本心とズレている時があり、どうも健気ないいこちゃんを遥菜自身が演じている、または読者に彼女を良く思わせるために言わせているように思えた。
数年前小説で読んだ時はここまで主人公に嫌悪感を抱かなかったのだが…。
漫画化される事で少し内容が変わり、文字が減り表情が加わりその描かれ方次第で印象が変わるのだなと思った。
- 16
いつわりの愛~契約婚の旦那さまは甘すぎる~