5.0
心臓がドキドキしてキツイ。
小中高生の現役親、特に父親は真面目に一読の価値がある。
あえてそれぞれの親目線からの視界だけで描かれているのが特にリアルだ。
子供繋がりで仲良くしていた親同士の人間関係なんて、いとも容易く壊れて憎悪と苦悩に満ちた関係に裏返るリアル。
被害児童となった我が子が引きこもる姿を毎日見続けて被害意識を募らせる母親のリアル。
その怒りから加害児童とその親の死や破滅まで望む程の怒りに塗れるリアル。
いじめ被害者を守りたいという世論形成がこれまた容易く加害者狩りという新たなイジメに裏返るリアル。
自分は常識があり、人間性を大事にする人間だ、自分や我が子がイジメの加害者になるなどあり得ないと妄信する
「普通の親達」。
イジメの加害者にも被害者にもなった経験がない(自覚がない)普通の親達が集団になると
途端に匿名の無責任を発揮。 寄ってたかってリンチと言える言動を正義面して行う異常さのリアル。
正義感の暴走、匿名での炎上を楽しむ無数の「自覚無き加害者の群れ」のリアル。
子供だけでなく、むしろ大人も全員、被害者より加害者になる可能性の方が高い。
イジメが被害者より加害者の方が圧倒的に多いこと、そのままに。
ラストは状況から考えればやや穏やかな顔をしていたと思うが、現実には去って行く母も子も生涯消えぬ深い傷を負い、
それを正義面する匿名加害者に「いじられ続ける」のだ。
日本は戦時下ではないが違う意味でこの国は地獄かも知れない。
自殺者が多いのも地獄で藻掻いているかと胸に迫る。
集団が問うのは集団に属するのか否かであって、何が正しくて何が間違っているかではない。
なのに単純な正義正論で結託しようとすることが何よりも気持ち悪い。 凶悪な宗教団体と同じだ。
イジメに怒りを感じる人は全員逃げずに向き合い、自分がそれぞれの立場に置かれたらと考えるべき
重いテーマだけれど、可愛い絵柄、軽い筆致に救われている。
現実逃避に終始する教師、父親の姿も男の身としてリアル過ぎてキツかった。
世の女性達、特に母親の生きている世界の厳しさを、男達はもっと学ぶべきだと思う。
母親が「子育て」と口にする時は、単に衣食や教育の管理に留まらない、難しい人間関係を潜り抜けていく
幾多の問題に向き合わざるを得ないのだ、ということか。
二度読むのはキツイが、学校でもPTAでも一読すべきだと思う。
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娘がいじめをしていました