4.0
男性読者です。
明確にテーマとしては描かれていないがこの作品は「機能不全家族の子供達」だと思われる。
仁科は作中でも描かれている通り両親の過度な期待と過干渉の中で過ごし、アイデンティティーの危機に陥り、やがて死を選ぶ所まで追い込まれている。
一方で藤子は幼少期から思春期の間、親に借金があり緊張の高い状態で過ごしたことがさらっと語られている。借金は機能不全家族の重要な要素である。また藤子は「お人好し」と評価されるほど他人の意向に沿うように行動してしまう。機能不全家族の中で育った子供の中には「人の顔色を見てしまう」という傾向を持つ子供がいる。藤子もその傾向が見られる為おそらく私の推測は概ね間違いないと思う。
仁科は藤子に出会いアイデンティティーの危機から救われた。一方で藤子もまた仁科に出会い顔色を伺いながら生きる緊張から「癒され」救われている。
共にお互いの救いによって人生のフライトが始まったが、まだヨチヨチ歩きの2人である。仁科はストーカー化し、藤子は「お人好し」から抜け出せない。まだ完全には操縦できていないのである。
この作品はこうした重めのテーマを内包しており、またストーカーというセンシティブな要素もありながら重さがなくむしろ軽妙であり、応援したくなるキャラの描き方が巧みでついつい引き込まれてしまう。
2人が最後には思い思いに人生を操縦できるようになってほしいと1人の読者として願ってやまない。
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癒やしのお隣さんには秘密がある