5.0
まるで映画のようなストーリー
・青年は、無力な自分に自信がない一方で、自分の潜在能力を信じる自信家。その精神の矛盾が不安定さをよび、希死念慮がある。自分の生きづらさを奔放な母のせいにし、そんな青年を現実から幻想世界に誘ってくれるのが性的関係がある少女である。
・少女は、慎ましく清純な見た目とは裏腹に、女優を夢見る野心家である。権力をもった年上の男が現れ、その男についていけば夢が叶うと気がつき、理由をつけ青年から離れ、年上の男に囲われる。
・世間的には権力をもった男は、映画監督を生業としている。一見、立派な大人のように見えて、内実は自分の欲のままに生きる人間性であり、初恋の人に少女を重ね、職権を濫用してまでも少女を手に入れる。だが、子供が生まれることで少女との関係が壊れる。結局は、欲望のままに生きる男には家庭を築くことは難しいのである。
・青年の母親は、自由奔放で男性関係にだらしなく描かれているが、実はこの母親が物語の中で一番、現実とはなにかを受けいれ、自分を含めた世の中の人間たちを客観視できる人物である。母親は、人々の欲や弱さを知っているが故に、色恋沙汰に執着せず、息子のことも過大な評価をしない。人の気持ちは流れゆくもの、その中でうまく自分が生きるやり方を心得ている。だがそんな母が唯一動揺するのが、終盤の息子の死である。
考察。
これは現実のリアルを描いた作品。
現実と幻想の境目を彷徨った青年は、思い通りにいかない現実に疲れ果て死を選んだ。
女優を目指した女は、権力ある男を利用して夢を叶えようとしたが、現実はそれを許さなかった。結局は男に捨てられ、あたたかい家庭を築くこともできず、夢とはかけ離れたところでひっそりと暮らす。
権力で若い少女を囲った男は、現実に飽き、また新たな興味をもつものを探すように現実を自由に泳ぎながら生きる。しかしそれは、他人の人生を蝕みながら泳ぐ種類のものである。
現実を客観視できていた母親は、さて、息子の死をもってそれがどう変わるか。
あなたはどの人物に共感しますか?誰しもがこの物語の登場人物の誰かと同じ行動や考えで生きてるのではないでしょうか?
とても深いストーリーで私は好きです。
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かもめと密猟者