5.0
短編小説のようです
じんわりと、やりきれなさと切なさが胸に沁みる良作でした。
掘り下げてないとか、何が言いたいのかわからない、というレビューもありましたが、描かれていない部分を想像させる為に、それによって読む側の心に残りやすく、馴染みやすくするために敢えて全てを描き込まずにお話を作られているのではないかと感じます。
むしろ、たった2話でここまで、読む者に様々な余韻を残せるのはすごい事だと思います。
ただ、行間を読む事や想像力を持って読む事が苦手だったり、派手な展開、全てを説明してくれる物語が好きだ、というタイプの方には向かないのだと思います。
私は東京者ですが、母は地方の出なので、地方の封建的で閉塞感のあるあの感じ、とてもよくわかります。
東京でも、地域によっては似た感じのところがあるかもしれません。
どの地域であるにせよ、人から教育の機会を奪う事は許されません。
せっかく衣食住の心配のない環境に生まれたというのに、自由に生きる権利をあらかじめ奪われていて、しかもその事に気づいてすらいないなんて、辛すぎます。
絵のタッチは柔らかいのに無理解や慇懃な表情がきちんと伝わるように描かれていたり、会話もモノローグも語りすぎないのに感情が伝わるところ、とても引き込まれました。
思い出のキーホルダーを燃やすのは、それすらも、まきと自分を土地の因習に縛り付けているものだったと、主人公が感じたからなのだろうと思いました。
まきのような子が、1人でも減るといいな。
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帰郷