4.0
単純に
単純に病床記録として大変に興味深い。
それだけでもこの作品の価値は大変に高いと思う。
心肺停止から蘇生、意識回復までの過程、そこからの容体変化も幻覚等の症状も本人が絵描きで、
視覚感覚に優れていたからこそ覚えていられたのだろうと思うし、表現が出来たのだと思う。
他レビューでこの作者の個人的人格を理由に作品の価値を決めてる方がいたけれど、
この作品だけを読んで感じた事は、もしこの作者が心底最低の人間であったならば、
多分、この作品の中の医師の言葉通り、
見舞客も途絶え、家族にも見捨てられたのではないかと思う。
この人が絵描きである事に必死でしがみついていたのは、
遠ざけたいと望む周りに追い詰められた部分も多いにあったのだろうなぁと思えた。
もう無理です描けませんと言えば、ほれ見た事かと言われてしまう。
その恐怖は大きかったのだろうと想像がつく。
言うなれば、ブラック企業勤めと同じでしょう。
そこら辺の自分語りはあまりせず、病床からの前向きになって行く過程の方を大事に描いていると思うし、
もっと暗く絶望した瞬間もあったのでしょうが、そういう部分は伏せている事も感じられる。
作品としてもキチンと読み物として成立してるので、作者のプロ意識と良識を感じます。
作者に対してどう思うかは多分人それぞれなのでしょうが、
勝手な振る舞いで命を落としかけた作者を支えたたくさん人々が、恐らくはその正しい答えなのだと思います。
少し短い気がして、不完全燃焼な部分はありますが、とにかく興味深い作品でした。
- 8
死んで生き返りましたれぽ